佐々陽太朗の日記

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『ソウルメイト』(馳星周:著/集英社文庫)

2021/05/23

『ソウルメイト』(馳星周:著/集英社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

人間は犬と言葉を交わせない。けれど、人は犬をよく理解し、犬も人をよく理解する。本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ。余命わずかだと知らされ、その最期の時間を大切に過ごす「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」、母の遺した犬を被災地福島まで捜しに行く「柴」など。じんわりと心に響く、犬と人間を巡る7つの物語。愛犬と生きる喜びも、失う哀しさも包み込む著者渾身の家族小説。

 

ソウルメイト (集英社文庫)

ソウルメイト (集英社文庫)

  • 作者:馳 星周
  • 発売日: 2015/09/18
  • メディア: 文庫
 

 

 十日ほど前に『少年と犬』を読み本書も読みたくなった。『少年と犬』もそうであったが、馳氏は犬を擬人化せず物語を書いていらっしゃる。それでいて犬が飼い主に寄り添い、飼い主に全幅の信頼を寄せ、あるときは飼い主に甘え、またあるときは飼い主を心配する姿を過不足ない言葉で書くことで読み手の心を温かいもので充たしてくれる。7篇それぞれ良かったが、中でも「柴」「ジャーマン・シェパード・ドッグ」「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」が特に良かった。それは私の好みの犬種でもある。自分が飼っているわけでもないのに、涙が出るほど愛おしくて抱きしめたくなる。

 私は犬を、いや犬に限らずペットを飼わないと決めている。若い頃は、仕事に忙しく充分にかまってやることができそうもなかったから。つまりその犬を幸せにしてやる自信がなかったからである。それに愛した者を失うことを怖れたということもある。今は自分が先に死んでしまうかもしれないと思うとやはり飼えない。それでも『少年と犬』『ソウルメイト』と、こんなに愛おしい物語を読んでしまうと犬と暮らしたくてたまらなくなった。もし今、飼い主からはぐれてしまった犬を見てしまったら、捨てられた仔犬に出遭ってしまったら知らんぷりはできない。そんなこと、とてもじゃないけどできない。