佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『マカロンはマカロン』(近藤史恵:著/創元推理文庫)

2021/06/10

『マカロンはマカロン』(近藤史恵:著/創元推理文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルはカウンター七席、テーブル五つ。三舟シェフの気取らない料理が大人気。実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解いてくれる名探偵でもあるのです。突然姿を消したパティシエが残した謎めいた言葉の意味は?おしゃれな大学教師が経験した悲しい別れの秘密とは?絶品揃いのメニューに必ずご満足いただけます。

 

 

 ”ビストロ・パ・マル”シリーズの第三弾。シリーズ第一弾『タルト・タタンの夢』を読んだのは2014年6月のこと。あれからもう7年も経ったのか。そしてシリーズ第二弾『ヴァン・ショーをあなたに』を読んだのは2015年3月のことだったので、第二弾から本作までずいぶん時間が空いたことになる。本作が文庫で発売になったのはほぼ一年前2020年7月のようだ。発売になったことを知らず、一年近く経ってしまったのだが、気づくきっかけになったのはたまたまテレビ大阪で『シェフは名探偵』というドラマをやっているのを視たからだ。シェフ三舟忍役の主演は西島秀俊、ギャルソン高築智行役を濱田岳が演じている。それを視て、ひょっとしてシリーズの続編が上梓されているのではないかと調べて本作を購入した。

www.tv-tokyo.co.jp


『シェフは名探偵』は、テレビ東京系列で放送されます。

jhon-wells.hatenablog.com

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 日常のミステリ、それもお仕事ミステリとなれば私の大好物。シリーズ第三弾の本作も充分愉しめました。私は食べることが好きだが、フランス料理ではなく日本料理や居酒屋の肴といったものを好む。中華料理で酒を飲むのも好きだ。ワインよりも日本酒が好きなので、どうもフランス料理には縁遠い。それでも、本作に出てくる料理やデザート(いやフランス料理風にはデセールと言うべきか)は充分おいしそうに感じられる。近藤氏はビストロを訪れる客の所作や食べものの好みで見事にその人物の輪郭を描ききる。そしてその客が抱える悩み、屈託、時には悪巧みや逆に人を想う温かい気持ちなどをシェフの三舟がその鋭い洞察力で見抜き、見えなかった真相を皆の前につまびらかにする。お見事としか言いようがない。

 ぜひとも近藤氏にはこのシリーズを長く続けていただきたいと願う。本シリーズの続編を心待ちにするとともに、「女清掃員探偵キリコ」シリーズと「サクリファイス」シリーズの続編も心待ちにしている。そこのところよろしく。