佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『不夜城Ⅱ 鎮魂歌(レクイエム)』(馳星周:著/角川文庫)

2021/06/12

不夜城Ⅱ 鎮魂歌(レクイエム)』(馳星周:著/角川文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

新宿の街を震撼させたチャイナマフィア同士の銃撃事件から二年、警察の手すら届かない歌舞伎町の中国系裏社会を牛耳るのは、北京の崔虎、上海の朱宏、そして、銃撃事件で大金を手に入れた台湾の楊偉民だった。勢力図も安定したかと思われた矢先、崔虎の手下の大物幹部が狙撃され、歌舞伎町は再び不穏な空気に包まれた!崔虎は日本人の元刑事に犯人を探し出すよう命じるが、事態は思わぬ方向へと展開していく…。事件の混乱に乗じ、劉健一は生き残りを賭け、再び罠を仕掛けた!―驚異のデビュー作『不夜城』の二年後を描いた、傑作ロマンノワール

第51回日本推理作家協会賞受賞作。

 

 

 

 いやはやなんともすごいノワール小説であった。仏教であれ、キリスト教であれ、なんであれ敬虔な信仰をお持ちの方は読まぬ方が良いだろう。

 ここには愛やら正義などかけらもない。金、セックス、快楽のためなら他人を踏みにじり搾取することを躊躇わない。食うか食われるか、弱いヤツは限りなく奪われる。”弱い”となめられることは死に繋がる。面子が傷つけられたらそれを回復すべく徹底して報復する。でなければ弱者に身を落とす羽目になる。強者ですら、いつその地位から追い落とされるかという不安から、偏執狂的な疑心暗鬼に駈られる。不安が暴力となって暴走する。殺られる前に殺る。命と面子をかけた殺しと復讐の連鎖はどこまでも続く。どんなことをしても生き残る、それだけが目的であり、生き残った者が正義となる非情な世界はいっそ清々しい。

 さてシリーズ完結編『長恨歌』を読もう。