佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

映画『不夜城』

 2021/06/12

 先日、馳星周氏のデビュー作にしてノワール小説の名作である『不夜城』を読んで、映画も観ることにしました。

 

不夜城』(1998年、日本)―122min
監督:リー・チーガイ
脚本:リー・チーガイ、野沢尚
原作:馳星周
出演:金城武山本未來椎名桔平 ほか

 

 テンポ良く話が進み、充分愉しめました。ただ、映画が悪いわけではないのですが、小説好きの私からすればやや物足りなさを感じるのも確か。ベストセラー小説が映画化されたとき、たいていの場合、映画は小説を超えることが出来ないと私は思う。映画化を前提に小説が書かれていないことにも一因があるのかもしれない。 小説のほうが圧倒的にその世界観が頭に入ってくるし、感情移入できる。先に原作を読んでしまうと、自分の頭がイメージした映像と映画の映像との間にギャップが生じるということもある。特にこの小説には激しい暴力シーンやセックスシーンが描かれているのだが、映画では一般公開を念頭にややソフトな表現にとどめた嫌いがある。暗黒街に暗躍する魑魅魍魎のもつ不気味さ、脅威、残忍冷酷な様など、小説世界にある異様なほどの緊迫感が表現し切れていない。

 そんなこんなで小説(原作)を読んだらあえて映画を観る必要はないのかもしれない。それでも台湾人の父と日本人の母の間に生まれた混血・劉健一を演じた金城武ははまり役だし、ヒロイン小蓮役の山本未來もすごく魅力的だった。息つく暇もないほど画面に惹きつけられた二時間でした。

 どうでもよいことだが、本編が始まってすぐ、ちょい役で原作者の馳星周氏が映っていたようだ。ここ一月で馳氏の小説を五冊読んだ私には、そんなこともちょっと嬉しかったりする。どうやら、すっかり馳星周ファンになってしまったようだ。