佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2021年8月の読書メーター

2021/09/01

8月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4849
ナイス数:986

 

 先月は7月に読み始めた『模倣犯』(宮部みゆき)を読み切ったあと、同じく宮部氏の杉村三郎シリーズを読み始めた。知的で心優しいふつうの探偵ということで、マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスン・シリーズの続きにも久々に手をつける。   

 そしてノンフィクションの名著、ジャレド・ダイアモンド氏の『銃・病原菌・鉄』も読んで少々教養を身につけた。

 なかなか充実した読書に満足。


模倣犯(四) (新潮文庫)模倣犯(四) (新潮文庫)感想
事態はどんどん悪い方に転がっていく。ピースが自信満々に好き放題やっていることにフラストレーションMAXだ。1巻から4巻まで溜まりに溜まったフラストレーションがはけ口を求めている。果たして最終巻ではそれを一気に解消してくれるのか。有馬義男じいさんと篠崎刑事、そして建築家の働きに大いに期待。さあ、宮部みゆき劇場はいよいよ大詰めを迎える。喜びの大団円は望むべくもないが、せめて正義の鉄槌をクソ野郎ピースに下して下され~~! <(_ _)>
読了日:08月01日 著者:宮部 みゆき


模倣犯(五) (新潮文庫)模倣犯(五) (新潮文庫)感想
ついに最終刊。警察の捜査によって緻密にじわじわと追い込まれていく結末を想像していたので、意外な結末。謎解きを楽しむミステリではなく、犯罪者とその被害者、そして身内に犯罪者を持ってしまった家族、被害者の家族、犯罪者を追う警察とジャーナリストといった様々な人間心理にスポットをあてた群像劇であった。それにしても全5巻という長編を、いっさいだれることなく読ませてしまうストーリーメイクと筆力に脱帽。
読了日:08月03日 著者:宮部 みゆき


昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)感想
イイ!かなりイイ! 地道に調査を進める誠実な探偵・杉村三郎。良いではないか。マッチョではない。気障なところもええかっこしいなところもない。天才的な推理力があるわけではない。どこまでできるか分からない男ではある。しかしけっしてしないであろうことは分かる。弱い者を踏みつけにするようなこと、人の好意につけ込むようなこと、たとえ人に見られていなくても自分の心に疚しいことはしない。おそらくそうだ。規範に従って生きる姿は立派なハードボイルドだ。優男だけれど素敵なキャラクターだ。シリーズ第1作に遡って読まねばなるまい。
読了日:08月07日 著者:宮部 みゆき


日本鉄道美景日本鉄道美景感想
私は鉄ちゃんではない。しかし旅好きの常として鉄道には一定の愛着がある。旅にカメラは携えているが撮り鉄でも乗り鉄でもなく、敢えて言えば呑み鉄である。そして私の旅のパターンは、ロードバイクでその地を巡るやり方。本書に収めてある写真は撮り鉄好みのものであり、同じ景色を写真に収めたいとは思わない。それでも鄙びた田舎を走る鉄道は旅情をかき立てる。あぁ、旅に出たいと思わせる。  初秋に東北、北海道を旅しようと決めた。さすれば男鹿線五能線根室線釧網本線沿いの景色を楽しみたい。
読了日:08月09日 著者: 


沈黙のセールスマン (ハヤカワ・ミステリ文庫)沈黙のセールスマン (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
あいかわらず仕事が少なく金に困っており、手持ちの非常時資金の残高を勘定するところから物語は始まる。ついに調査料金2割引の新聞広告を打つ。新聞広告を見た母親に「恥さらしだね」と言われてしまう始末だ。情けないではないか。探偵アルバート・サムスンはけっして強い男ではないし拳銃も持ち歩かない心優しい男。しかし同時に弱い者が強い者に蹂躙されることを放っておけない男でもある。「なりたくない自分にはならない」というサムスンの矜持。見た目には頼りなく冴えない探偵だが、内には気高い心を秘めている。カッコイイではないか。
読了日:08月10日 著者:マイクル・Z. リューイン


魔弾 (新潮文庫)魔弾 (新潮文庫)感想
ティーブン・ハンターらしく、肝となるのは狙撃。それも暗闇の中で、弾丸の音を消して標的となった者達に狙撃されていることを悟らせないで26人を次々と射殺するという離れ業をやってのけようというのだからすごい。  狙撃手とそれを阻止しようとする者の織りなす冒険小説でありながら、物語の背骨にホロコーストシオニズムを据えた重厚な作品となっている。読み物としてのおもしろさは圧倒的に『極大射程』に軍配が上がるが、ハンターが処女作にかけた気合いが感じられ、良い意味での力みが好もしい。
読了日:08月13日 著者:スティーヴン ハンター


誰か―Somebody (文春文庫)誰か―Somebody (文春文庫)感想
結婚相手以外は普通のサラリーマン杉村三郎は探偵がするような調査は初めてのことだったが、コツコツと調査を進めていく。そうした中で、関係者の誰もが知らなかった事実が少しずつ明らかになっていき、最初は底の知れたものと感じていた謎がいつの間にやら違う側面を持ち始め、最後に見えた意外な事実に驚かされると同時にイヤーな気持ちにさせられる。人には美しい面とイヤな面、両面があることを読者は改めて思い知らされるのだ。「こんなことなら知りたくなかったかも・・・でも知ってしまった」との思い。まさにイヤミスの極致と言える。
読了日:08月15日 著者:宮部 みゆき


消えた女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-5))消えた女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-5))感想
人間は一皮剥けば違う顔を持っている。「人は見かけによらぬもの」とわかっちゃいるけどついつい思い込みの罠にはまってしまう。探偵サムスンは何度も間違う。コツコツと調査を重ねて、確認できた事実から思い込みを見直し修正する。何度も何度もそれを繰り返すことで、これまで見えてこなかった意外な真実にたどり着く。天才的なひらめきを持っているわけではない。荒事は苦手。それでも真実を知りたいと思う気持ちは人一倍強く、真っ当な人にはいつでも手を差しのべようとしている。良いミステリです。なぜ絶版になっているのか、理解に苦しむ。
読了日:08月16日 著者:マイクル・Z・リューイン


銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎感想
現代社会の不均衡を生み出したものはなにか。世界の富や権力は、なぜ現在あるようなかたちで分配されてしまったのか。それを解き明かそうとするのが本書の趣旨だ。この種の問題を考えるとき、レイシズムが顔を覗かせることが多い。それはポリティカル・コレクトネスが叫ばれる現代においてなお根強く信奉されているイデオロギーであって、私を極めて不愉快にさせる。しかし本書は私に読む気を起こさせた。その理由は著者の公正で誠実であろうとする姿勢にある。氏はこの謎を西欧文明の側からの視点に偏ることなく解き明かそうとしている。
読了日:08月20日 著者:ジャレド ダイアモンド


銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎感想
「歴史に ”if” はない」とはよく言われることだ。本書を読んで強く思った「もしも」は、「もしも中国(明)において、十五世紀初頭の”鄭和の西洋下り”政策が継続されていたなら」一六世紀以降の世界の覇権はヨーロッパではなく中国が握っていたのだろうか。そして中国はやはり世界を侵略し植民地化を図ったのだろうか。二十一世紀の世界はどんな姿になっていたのだろうということだ。だれかそんな小説を書いてくれないものだろうか。きっとピエール・ブールによる小説『猿の惑星』を超える作品になるに違いないだろうと思う。
読了日:08月27日 著者:ジャレド ダイアモンド


名もなき毒 (文春文庫)名もなき毒 (文春文庫)感想
世の中は不公平だ。生まれながらに違いがある。どんな親の下に生まれるか、どの国に生まれるか、男に生まれるか女に生まれるか、五体満足に生まれるか障碍を持って生まれるか、要は生まれ落ちた環境によって天と地ほどの差がある。それが世の中というものだ。なぜ世の中にはさして努力をしなくても裕福に幸せそうに生きている人がたくさんいるのに、自分はそうじゃないのだろう。そう思うのは無理も無い。しかしその疑問は詮無いこと。自分でなんとかするしかない。そう覚悟するしかないだろう。恵まれた者と自分を比べることこそ、不幸への近道だ。
読了日:08月31日 著者:宮部 みゆき

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