佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『季節の終り』(マイクル・Z・リューイン:著/ハヤカワ・ミステリ文庫)

2021/09/03

 『季節の終り』(マイクル・Z・リューイン:著/ハヤカワ・ミステリ文庫)を読んだ。

 このところ宮部みゆき氏の杉村三郎シリーズとマイクル・Z・リューインのアルバート・サムスン・シリーズを交互に読むことを愉しんでいる。どちらもやりきれない現実に突きあたるが、どんどん読みたい、次作を読みたいという気持ちになる良い小説シリーズだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

著名な銀行家ベルターの依頼は切実だった。最近、出生証明書が偽造されていたことが判明した、妻のポーラの過去を探ってくれというのだ。わたしは記録を調べ、ポーラが養子だったという衝撃の事実を突きとめた。が、彼女の育ての母親はまったく事情を語ろうとしない。やがてわたしの前に、埋もれていた過去の悲劇が浮かぶが…知性派探偵サムスンが、人々の記憶のなかから五十年前の殺人事件の真実をたぐりよせる第六作。

 

 

 

 拳銃を持たず、いつも金に困っている、ごくふつうの探偵アルバート・サムスン。困っている人についつい寄り添ってしまう優しさもいつもどおり。ひと言で云えば誠実であること、それがアルバート・サムスンの規範である。今作でもその規範にちょっとだけ目をつむれば羽振りが良くなると分かっていながら、それをしない。痩せ我慢ではある。しかし損得では動かず、どう行動すべきかで動く。けっしてマッチョではなく、さらりとそれをやってのける彼がたまらなくカッコイイ。ハードボイルドだなぁと嬉しくなる。ハードボイルドは痩せ我慢の小説だ。