佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『私のカレーを食べてください』(幸村しゅう:著/小学館)

2021/09/14

『私のカレーを食べてください』(幸村しゅう:著/小学館)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

第2回「日本おいしい小説大賞」受賞作!

「お前の売りは何だ?」「私にはカレーしかありません!」――――。

古びた喫茶店の装いながら、本格的なスパイスカレーを出す「麝香猫」。そこで働く山崎成美は調理師学校に通う19歳。成美は幼い頃に両親が離婚、育ててくれた祖母も失踪してしまい、天涯孤独の身であった。

そんな彼女の運命を変えたのは、小学校の先生が作ってくれた一杯のカレーライス。成美はその味を自分でも作りたい一心で調理を始め、カレーの奥深さに戸惑いながらも、ようやくきっかけを掴みはじめていた。しかし突然、ある事情から「麝香猫」が店を閉めることになってしまい……。

理想のカレーを追い求める少女と人々の人情が織りなす、おいしい×青春×お仕事小説!

【編集担当からのおすすめ情報】
カレーの街、神田・神保町発の受賞作!

巻末にはスパイス料理研究家・印度カリー子氏による特製カレーレシピも収録。

読んで楽しい、作っておいしい1冊です!

 

 

 

 第2回「日本おいしい小説大賞」受賞作にして、その題材がカレーとなれば読まない手はない。昨年の夏、受賞作決定の報を小学館のサイトで見ていたので読みたいと思っていたのだが、今年の1月の出版に気づかないままになってしまった。第3回「日本おいしい小説大賞」の受賞作の発表があり、そういえば第2回の受賞作を読んでいなかった、迂闊であったと気づいた次第。

 本を手に取ると帯に「椎名誠氏激賞!」とある。オォ! 素晴らしいではないか。しかも「印度カリー子氏特製カレーレシピ付き!」の文字も躍っている。素晴らしいの二乗ではないか。どれどれ・・・・・・と本を開き読み始めたらすぐに物語に没頭。一気に読んでしまった。なんとも美味しそうなカレーにページを捲る手が止まらない。まるでスプーンを手に取りカレーを一口、口にした瞬間手が止まらなくなり、ガツガツと一気に食べてしまうように。これは幸村氏の文章力によるものか、はたまたカレーが持つパワーの故か。そこのところは判然としないがそんなことはどちらでも良いではないか。とにかく主人公のカレー愛がグイグイと胸にせまってきた。作中の「まずは優しい手を作ること。その手で作った料理が食べた人の栄養になって、みんなの体を大きくするんだからね」であるとか、「人はマズい料理を食べたときより、雑に調理された料理を口にする方が心が沈む――」といった言葉に幸村氏の食に対する姿勢が現れる。「おいしい小説大賞」の受賞にふさわしい小説でした。

 Web上で紹介された椎名氏と幸村氏の「カレーの日対談」も楽しく読みました。椎名氏は独断で日本の三大食は「カレー」「ラーメン」「カツ丼」と仰るが、私なら「カレー」「とんかつ」「天ぷらそば」と言いたい。この違いは、椎名氏がビール党なのに対し、私が日本酒党だからなのだろう。おそらく。