佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『本バスめぐりん。』(大崎梢:著/創元推理文庫)

2021/12/31

『本バスめぐりん。』(大崎梢:著/創元推理文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

種川市の移動図書館「本バスめぐりん」。乗り込むのは六十五歳の新人運転手テルさんと図書館司書ウメちゃん、年の差四十のでこぼこコンビだ。返却本に挟まれた忘れ物や、秘密を抱えた利用者など、巡回先でふたりを待ち受けるのは、いくつもの不思議な謎?!書店員や編集者を主人公に「本の現場」を描いてきた著者による新たな舞台は、図書館バス!ハートフル・ミステリ短編集。

 

 

 今年の年末は甘いもの(コージーミステリー)と辛いもの(ハードボイルド)両方を楽しみたい。いや温かいものと冷たいものと言ったほうが寧ろ適切か。そう思って選んだコージーミステリーが本書である。

 正直なところ謎解きとしての楽しみはさしたる事はない。しかしなにせ移動図書館をめぐる物語なのだ。本好きにとってこれほどうれしい設定はないだろう。そしてその名も「本バスめぐりん」とは。長らくバス会社で仕事をした私には特別の親近感があるではないか。二週間に一回、3000冊の本を積んだバスが家の近くに来てくれる。そんな光景を想像するだけで心が浮き立ってくる。そしてその緩さに心温まるではないか。お母さんを癌で亡くした少女がお父さんと引っ越し先を内見していたところに「本バスめぐりん」が廻ってきたのを見て「ここに引っ越したい」と言ったエピソードに心が震えた。

 さて次はハードボイルド。レイモンド・チャンドラー生誕百年を記念して、気鋭の作家がフィリップ・マーロウを蘇らせたトリビュート・アルバム的短編集。はてさてマーロウがどんな活躍を見せてくれるのだろう。これまた想像するだけで心が浮き立つ。