佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『うちのレシピ』(瀧羽麻子:著/新潮文庫)

2022/02/22

『うちのレシピ』(瀧羽麻子:著/新潮文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

美味しい食事──それは誰もが知っている魔法。
『オルゴール店』シリーズで話題の著者、もうひとつの感涙ストーリー!

舞台は、家族経営のレストラン「ファミーユ」。

働くこと。恋すること。
食べること=生きること。

チョコレートケーキ、すきやき、ミートソース。その味は、きっと生涯忘れない。小さなレストラン「ファミーユ」を営む両親のもとに生まれた真衣。サラリーマンを辞めて店に入った啓太。ふたりの結婚は、頑固一徹の料理人と仕事命の敏腕ビジネスウーマンをも結びつけた。当然そこには摩擦も起こって……。私たちは、恋や仕事や子育てに日々悩みながらも、あたたかな食事に癒される。美味しさという魔法に満ちた、6つの物語。解説・瀧井朝世

【主な登場人物】
正造 レストラン「ファミーユ」の生真面目なシェフ
芳江 正造の妻。穏やかに夫と娘を支えている
真衣 正造と芳江のひとり娘で「ファミーユ」のウェイトレス
 *
美奈子 投資銀行のディレクター。啓太が料理人になることに反対だった
雪生 会社員。もと美奈子の後輩社員で激務の妻をサポートしてきた
啓太 雪生と美奈子のひとり息子。「ファミーユ」で正造に師事する

 

 

 

 食にまつわる六つの心温まるエピソードで、ある二つの家族像を描いた連作短編集。

 家族って、つまるところ「思いやり」なのだな、というのが読み終えた感想。家族だからと言って、けっして同じ価値観を共有しているわけではない。当然、意見の相違とそれによる軋轢はある。距離が近いだけに、その軋轢は逃げ場がなく時にしち面倒臭い。それでもお互いのことを深く知っているその絆があるから恕(ゆる)すことができる。お互いのことを理解できるのではない。理解できないまでも恕す、相手の思いに寄り添うことができるのだ。そしてこれが家族として大切なところなのだが甘えることができる。赤の他人にはなかなか甘えられない。しかし家族にならば、自分のダメなところ、至らないところを甘えて恕(ゆる)してもらうことができる。

 もうひとつ家族に大切なこと、それは一緒にごはんを食べることだろう。どんなに仲違いしていて気まずくとも食卓を共にする。手間暇をかけた料理を一緒に食べる。ただそれだけのことだが、それは家族の大切な儀式だ。時にそれは幸せの儀式、お祝いの儀式であり、癒しの儀式ともなる。