佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『もう一杯、飲む?』(角田光代ほか:著/新潮文庫)

2022/05/04

『もう一杯、飲む?』(角田光代ほか:著/新潮文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

ときに酒は、記憶を呼び覚ます装置になる。わたしを魅了するあの人は昼間から水玉のお猪口を手にしていた。僕はビールの苦さに重ねて父の呟きを反芻する。恋の行方を探りながらそっと熱爛を飲んだ日、ただ楽しくて倒れるほど飲んだ夜、まだ酒を知らなかった若さを、今は懐かしく思う。もう会えない誰かと、あの日あの場所で。九人の作家が小説・エッセイに紡いだ「お酒のある風景」に乾杯!

【目次】

「冬の水族館」(角田光代

「その指で」(島本理生

「これがいいんだ」(燃え殻)

シネマスコープ」(朝倉かすみ

「陸海空旅する酔っぱらい」(ラズウェル細木

カナリアたちの反省会」(越谷オサム

「奇酒は貴州に在り」(小泉武夫

「エリックの真鍮の鐘」(岸本佐知子

「振り仰ぐ観音図」(北村薫

 

 

 作家、エッセイスト、漫画家、博士たち9人による酒をテーマにしたアンソロジー

「冬の水族館」(角田光代)、「その指で」(島本理生)は大人の男と女を描く。短編ながら味わい深い。私には10回生まれ変わってもこういうシチュエーションはなさそうだ。つまり私の感性からはほど遠い。

 朝倉かすみさんは先日『平場の月』を読んだばかり。他の作品も読みたいと思っていたが、収録作「シネマスコープ」を読んで少し引いた。ハッキリとしないところが多い作品で、それだけにどう読むかは読者の想像力に任されている。読み方によってはおそろしくおぞましい作品だ。私がおぞましいと感じた部分はつまり私が想像したこと。ということは私の頭の中はおぞましい。これはこまった。あまり深く考えずに流そう。

カナリアたちの反省会」(越谷オサム)はおもしろい。

 やはり良かったのは「振り仰ぐ観音図」(北村薫)。出版社の編集者と恩師の教授の会話の妙に感心。私もこんな編集者と河豚を肴に飲みたいぞ。