佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『鴨川食堂 しあわせ』(柏井壽:著/小学館おいしい小説文庫)

2022/06/24

『鴨川食堂 しあわせ』(柏井壽:著/小学館おいしい小説文庫)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

「もう一度食べたい」を叶えてくれる食堂が、京都にはあるらしい―。料理雑誌の一行広告に導かれ、迷い人が訪れるのは、鴨川流・こいし親娘が営む食堂だった。失踪した父にどうしても伝えたいことがある「焼鳥」、亡き妻に秘めた想いの「駅弁」、夫の浮気が頭から離れない「イタリアン」、情よりお金を選んだ「巻き寿司」、恋人の心残りである「フィッシュアンドチップス」、弟との最後の食事になった「すき焼き」…。温かく心の籠もったおもてなしで、依頼人の悩みに寄り添います!さらにボリュームアップして帰ってきた、美味しいミステリー最新作、第九弾!

 

 

 

 このシリーズも本作で第9弾。初めて読んだのは2015年1月12日のこと。もう7年も前のことになるのか。依頼、このシリーズはすべて読んで来た。

 今作も思い出の味をさがすエピソードが六編。人それぞれに人生があり、その記憶を象徴するような味がある。それはほろ苦かったり、甘酸っぱかったり様々だが、その人の記憶にくさびのようにささって忘れられないものばかり。あくまでプライベートなものであるが、それだけに何ものにも代えがたいものだろう。その意味ではプライスレス。各エピソードに必ず依頼人が調査料としていくら支払えば良いかを尋ねる場面があるが、「料金は決めていない。気持ちに見合った金額を振り込んで欲しい」と答える。下世話な話だが、いったいいくらぐらい振り込まれるのだろうと気になったりもする。

 思い出の味をさがすことは、過去を掘り返すことでもある。そしてその過去は必ずしも幸せなものではない。たとえ今は成功者であっても、過去には痛烈な失敗や筆舌に尽くしがたい苦労があったろう。やり直しが出来ないだけに悔いていることも多いだろう。もう一度、思い出の食べものを味わうことで依頼人が過去にどのような決着をつけたか。読者はそれを想像することで、登場人物の人生を味わうことになる。

 今作六編の中で、私の好みは「巻き寿司」のエピソード。子を思う親の心には勝てない。既に二親とも亡くしている私にはこうしたエピソードがグサリと刺さる。自分一人で生きてきたなどと思い上がっていなかったろうか。謙虚さを忘れてはいけない。そう思った。

 

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