佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『汚れつちまつた悲しみに・・・・・・ 中原中也詩集』(中原中也:著/佐々木幹郎:編/角川文庫)

2022/07/23

『汚れつちまつた悲しみに・・・・・・ 中原中也詩集』(中原中也:著/佐々木幹郎:編/角川文庫)を読んだ。

 何年ぶりだろう、中也を読むのは。詩集を買った覚えはないのでたぶん中学生、あるいは高校生の頃だったろう。

 まずは出版社の紹介文を引く。

夭折の天才詩人・中原中也の作品がいま蘇る!まったく新しいアンソロジー

「汝陰鬱なる汚濁の許容よ、更めてわれを目覚ますことなかれ!」(羊の歌『山羊の歌』所収より)。
日本の近代詩史に偉大な足跡を残した夭折の天才詩人中原中也。30年の生涯の間に作られた詩の中に頻出し、テーマとなることが多かった三つの言葉、「生きる」「恋する」「悲しむ」を基軸に、制作年月推定順に作品を精選。代表作「汚れつちまつた悲しみに……」をはじめとする、今なお心を揺さぶられる詩篇の数々から、中也の素顔を浮かび上がらせるまったく新しいアンソロジー詩集。

 

 

 

 六十二にもなったジジイが中原中也を読むなどと・・・人に笑われそうな気がするが、たまにはそんな気分にもなるのです。青くさいなぁ。でもジジイの中にもほんの僅かに、それは今まさに燃え尽きる線香花火の散り菊の花びらのように、青さは残っているものです。

 しかしまあ、思えば年をとったもんだ。昨夜はけっこう酒を吞んだが、今朝、千の天使はバスケットボールしない。

 今も昔も好きな詩は『月夜の浜辺』。

 月夜の晩に、ボタンが一つ

 波打際に、落ちてゐた。

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 それを拾って、役立てようと

 僕は思つたわけでもないが

    月に向かってそれは抛れず

    波に向かってそれは抛れず

 僕はそれを、袂に入れた。

 そして本書の巻頭を飾った『汚れつちまつた悲しみに・・・・・・』。

 汚れつちまつた悲しみに

 今日も小雪の降りかかる

 汚れつちまつた悲しみに

 今日も風さへ吹きすぎる

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 言いようのない悲しみにあふれています。

『サーカス』も良い。

 幾時代かがありまして

   茶色い戦争ありました

 幾時代かがありまして

   冬は疾風吹きました

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 そして『酒場にて』。

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 諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。

 しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。

 ほがらかとは、恐らくは、

 悲しい時には悲しいだけ

 悲しんでられることでせう?

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