佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

映画『THE GUILTY』

2022/10/07

 映画『THE GUILTY』をビデオで鑑賞した。2018年、デンマークのサスペンススリラーです。配信元の紹介文を引きます。

見えない事件が見えてくる これは誰も体験したことがない、新感覚サスペンス

「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」というシンプルな設定ながらも、予測不可能な展開で観る者を圧倒させ、第34回サンダンス映画祭では、『search/サーチ』(NEXT部門)と並び、観客賞(ワールド・シネマ・ドラマ部門)を受賞。その後も第47回ロッテルダム国際映画祭 観客賞/ユース審査員賞、第44回シアトル国際映画祭 監督賞の受賞などに加え、世界中の映画祭で観客賞を総なめにした。第91回アカデミー賞®外国語映画賞 デンマーク代表にも選出され、早くも2019年上半期の映画界を席巻する作品としての呼び声が高い。本作が長編映画監督デビュー作となるグスタフ・モーラーは「音声というのは、誰一人として同じイメージを思い浮かべることがない、ということにヒントを得た。観客一人ひとりの脳内で、それぞれが異なる人物像を想像するのだ」と語る通り、人間の想像力を縦横無尽に操るという全く新しい映像表現を見事成功させた。
視覚情報がない中、劇中に溢れる様々な“音”の中から、犯人を見つけ出すことができるのか―。これはあなたの予想を遥かに超える、未だかつてない映画体験となる。

監督    グスタフ・モーラー
出演    ヤコブ・セーダーグレン, イェシカ・ディナウエ, ヨハン・オルセン

www.youtube.com

 

 緊迫の88分。

 緊急通報指令室のオペレーターのアスガーはある日、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに事件解決に腐心するアスガーの焦燥が描かれる。画面のほとんどは警察の緊急通報司令室での電話のやりとりだ。そんな場面の連続で視聴者を88分間まったく飽きさせることなく結末まで惹き付ける。そして想像だにしなかった衝撃の結末。まったく隙のない完璧な映画でした。おそらく制作費がこれほど安い映画もないだろう。しかしこれほど満足させてくれる映画もない。

 私は中学生、高校生のころ、よくラジオを聴いたものだが、あの頃の感覚が蘇った気がする。最近ではすっかり刺激的な映像に慣れてしまって、より視覚的に強烈なものを視なければ満足できなくなっている。そこでこの映画だ。頭をガツンと殴られた気がする。シンプルに耳から入ってくる情報だけで、それこそ創造力をフルに活用して状況を把握しようとする。その緊迫感、緊張感はTVや映画のもたらすものとは異質なものだ。これほどまでにのめり込んでしまうのかと驚いたほどである。そして、この映画のすばらしいのは、その限られた情報だけで頭の中で想像し構築した事件の有り様がラストでどんでん返しを喰らうところだろう。してやられたり。この敗北感はけっして心地よくはないが、この映画を観た満足感は200%と言ってよい。