佐々陽太朗の日記

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『時宗〈巻の参〉震星』(高橋克彦:著/NHK出版)

時宗〈巻の参〉震星』(高橋克彦:著/NHK出版)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

亡き父・時頼の後継者として、時宗はその遺志を受け継ぎ国を一つにまとめるため、兄の時輔をはじめ北条一族や安達とともに、幕政に異を唱える将軍を更迭することに成功する。だが時を同じくして、大陸を席巻する蒙古の皇帝クビライから、服属を求める国書が日本に送られてきた。第八代執権となった時宗は、幕府の威信と武士の意地を賭け、かつてない最強の敵との戦いに臨む。2001年NHK大河ドラマ原作。

 

 

 いよいよ物語は佳境に入ってきた。蒙古の皇帝クビライからの使者が服属を求める国書を持って日本に来た。時宗は十八歳という若さで第八代執権となり、国をまとめ最強の敵との戦いに挑もうとする。予てより「立正安国論」で外国からの侵略を予言していた日蓮佐渡流罪になるいきさつもおもしろい。

 読みどころはかつて経験したことのない強大な敵である蒙古からの国書が来たことにうろたえ、ああでもないこうでもないと対応を決めかねる内裏をはじめとした国の中枢の姿と覚悟を決めた時宗の姿の対比。蒙古の使者とは形ばかりのもので、結局は隷属を迫り、さもなくば戦をしかけられるのが明白なのに、厳しい現実から眼をそむけようとする者がおり対応が定まらない。現代にも通じる歴史劇である。ウクライナがロシアに侵略され、台湾有事が現実となりそうな今の日本にあっても、国論をひとつにまとめるしっかりとしたリーダーの出現が待たれるところ。有事とせぬための外交が大切なことは論を待たないが、外交も国防の覚悟と強い軍備をはじめとした国力を背景としなければ意味をなさない。戦争はこちらが望まなくとも相手国の意向ひとつで始まるもの、相手国に見くびられて始まるものだと知らねばなるまい。