2023/04/08
『数の女王』(川添愛:著/東京書籍)を読んだ。
まずは出版社の紹介文を引く。
人間一人ひとりに「運命の数」が与えられている世界。メルセイン王国の王妃は、呪いで敵を殺しているという噂があった。王妃の娘で13歳のナジャはある日、数年前に死んだ最愛の姉ビアンカが、実は王妃によって殺されたという話を耳にする。その後、ナジャはあるきっかけで、禁じられた計算を行う妖精たちと出会い、王妃の秘密を知ることになる―「数」が運命を司る、不思議な国の物語。数論とアルゴリズムをテーマにした傑作ファンタジー!
川添愛氏は初読みである。読んでその独特の世界観に驚いた。強いて言えば白雪姫の世界観に似てなくもないが、その中に「ふしぎな数の世界」が織り込まれているのだ。読者はストーリー展開を楽しむと同時に数のふしぎに驚かされ魅了されることになる。そんな物語である。
本書では全ての人間が「運命数」を持つ世界が描かれる。その世界では人々はみな神から「運命数」を授けられている。そんな世界で人の運命数を知り操ることで呪いをかける術を手に入れた王妃が邪な権力欲に囚われる。呪詛により他者の数を奪い、不老不死の存在になろうとしたのだ。訳あって王妃の養女となった主人公ナジャはそんな王妃の振る舞いを知ることとなり、遂には王妃の企みを打ち砕くために動き出す。
主人公の成長していく様が本書の大きな魅力だが、さらに読者を惹き付ける要素となっているのが「ふしぎな数の世界」である。本書には「数(特に自然数)」に関するふしぎが随所にちりばめられ、それが王妃と戦う上での鍵となっている。それを列記すると約数・素数、合成数、素因数分解、過剰数、不足数、完全数、友愛数、フィボナッチ数列、フェルマーの小定理、擬素数、カーマイケル数、素数を生成する式、カプレカ数、三角数、巡回数、メルセンヌ数、メルセンヌ素数、ピタゴラス素数、リュカ数列、コラッツの予想となる。こう書くとなにやら難しそうで頭が痛くなるのではと思われそうだが、それがそうではないのだ。物語を読み、主人公を応援しながら数のふしぎに触れ、いつしかそれに魅了されている自分に気づく。たとえば本書を読んだあと、次のような動画を視て楽しんだりしてるって、なんだかふしぎ。