佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『キアズマ』(近藤史恵・著/新潮文庫)

『キアズマ』(近藤史恵・著/新潮文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

 

キアズマ (新潮文庫)

キアズマ (新潮文庫)

 

正樹19歳、メンバー不足の大学自転車部で青春ペダル爆走中。大感動のスポーツ青春小説。

ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのに―—走る喜びに突き動かされ、祈りをペダルにこめる。自分のため、そして、助けられなかったアイツのために。感動の青春長編。

 

 『サクリファイス』『エデン』『サヴァイヴ』に続く近藤史恵氏のロードレースもの第4弾。やはりこのシリーズに外れなし。今作も目一杯楽しませてもらいました。ヨーロッパでは紳士のスポーツをいわれるロードレースの醍醐味が随所に盛り込まれており、特にエースとアシストの関係において表れるこのスポーツの精神性の気高さに感動を禁じ得ません。自転車競技において求められるのは単にフィジカルな強さではなく、精神性の高さ、人間性の深みにあるのだと改めて感じた次第。エースが背負うものの重さは、エースのために犠牲を払うことを厭わないアシストの思いの深さだ。ビジネスにおいても、いや大げさなようだが人としての生き方を考えるとき、忘れてはならない視点だろう。

次作『スティグマータ』の上梓が待ち遠しい。