2025/11/06
『カエルの楽園2020』(百田尚樹:著/新潮文庫)を読んだ。
まずは出版社の紹介文を引く。
二匹のアマガエルがたどり着いた夢の楽園は悲劇的な末路を迎えたはずだったが、悪夢の翌朝、二匹はなぜか再び平和な地にいた。今度の世界では、ウシガエルの国で「新しい病気」が流行っていたが、楽園のカエルたちは根拠なき楽観視を続ける。しかし、やがて楽園でも病気が広がり始め…。国難を前に迷走する政府やメディアの愚かさを浮き彫りにし、三通りの結末を提示する、警告と希望の書。
ネットで大反響の寓話を緊急刊行!!コロナ禍の日本に投げかける、警告と希望の書。 二匹のアマガエルがたどり着いた夢の楽園は悲劇的な末路を迎えたはずだったが、悪夢から一夜明け、二匹はなぜか再び平和な地にいた。今度の世界では、ウシガエルの国で「新しい病気」が流行っていたものの、楽園のカエルたちは根拠なき楽観視を続ける。しかし、やがて楽園でも病気が広がりはじめ……。国難を前に迷走する政治やメディアの愚かさ、滑稽さを浮き彫りにし、衝撃の三通りの結末を提示する。『カエルの楽園』の続編として新たに書き下ろしされた寓話小説。ネット公開時に大きな反響を呼んだ作品に加筆修正を施した完全版。

先月の末、『カエルの楽園』を読んだ。本作はその続編。前作では主人公のアマガエル(ソクラテスとロベルト)が初めはカエルの楽園と思ったナパージュ(JAPANを逆に読んだものと思われる)が実は楽園でも何でも無く、誤った思想を盲信したあげく滅んでいく姿が描かれた。本作ではナパージュに幻滅し、明日にはナパージュを後にしようと決意して眠った翌朝からの話。目覚めた二人はナパージュが前夜まで違っていることに気づく。なんと時間が巻き戻され過去に戻っていたのだ。しかもその過去は昨日まで経験した過去と少し変わっていた。前夜までいた世界とは少しだけ違う世界(パラレルワールド)に身を置いていたのだ。その世界では一見ウシガエルとツチガエルが平和に共存しているように見えた。しかしお隣のウシガエルの国でおそろしい感染症が発生し、カエルがバタバタ死んでいるという。本書ではナパージュが新型感染症の脅威にさらされ右往左往する様子が描かれる。言わずもがなのことだがその様子はかつてのコロナ禍における日本そのものだ。さらに百田氏はその結末を三とおり提示する。
百田氏は「あとがき」に日本のコロナ禍における現実をそのままなぞって寓話にした理由を次のように語っています。
私たちはふだんの日常生活において、新聞で論説委員が書いた社説やコラムを読みます。またテレビでコメンテーターや学者が語ることを聴きます。国会で議員たちが国政を論じているのを見ます。彼らはいずれも高学歴で、知識も教養もあります。それだけに、その発言ももっともらしく聞こえます。しかし、彼らをカエルに置き換えて、同じセリフを言わせてみると、実生活では気づかなかった滑稽さ、愚かさ、間抜けぶりが見えてくるのではないかと思っています。これが、私が『カエルの楽園2020』を書いた理由です。
百田氏のこの言葉に私はハッとさせられました。つまり私たちが新聞やテレビなどのマスコミの言説をいかに信じやすいか、言い方を変えれば、有名人、知識人の権威に弱く騙されやすいかということにはたと気づくのです。同じ言葉がカエルのセリフに置き換わっただけで、権威のフィルターが取り除かれ、一見高度な見識にみえる考えが実は陳腐なものでしかなかったことが分かってしまうのです。このことに気づかされたのは私にとって大きな収穫でした。本書を読んで良かったと思います。
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