佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

9月の読書メーター

2012年9月の読書メーター


読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3879ページ
ナイス数:2678ナイス

 

 先月はなかなか良い読書をした。『美亜へ贈る真珠』カバーの画は全くいただけないが、中の小説は粒ぞろいの真珠の如くすばらしかった。時をテーマにしたロマンティックSFは中年のオッサンの心を鷲づかみした。何度も読み返したい。時空を超えた恋をテーマにした物語といえば、読みたいと念願していた『たんぽぽ娘』をついに手に入れた。年刊SF傑作選〈第2〉 (1967年) (創元推理文庫)を古本で手に入れたのだ。少々高くついたが、飲みに行く回数を1~2回減らせばイイかと割り切って買うことにした。

 直木賞作家となった辻村深月氏の小説も初めて読んだ。『僕のメジャスプーン』はなかなかの小説でした。直木賞受賞作の『鍵のない夢を見る』も文庫化を待って読んでみたい。

 先月の一番の収穫は原田マハ氏の『楽園のカンヴァス』。おそらく今年のマイ・ベストとなるだろう。

 


Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2012年 09月号 [雑誌]Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2012年 09月号 [雑誌]感想
私の一番行きたいは「越後妻有アートトリエンナーレ2012」。でも行けない。トリエンナーレとはなにかを調べると「3年に一度」ということらしい。ではトリエンナーレ2015に行けば良いではないか。よかった。記事には日本の素敵な美術館だけでなく、海外の美術館も紹介されている。海外には行くことはないだろうが一応記憶にとどめておく。カフェ&レストランBESTランキングにもそそられる。草間弥生さんも蒼井優さんも登場。草間さんにはそそられないが、なぜか目が離せない。蒼井さんと「しろくま」の記事にはマジそそられた。
読了日:9月4日 著者:

 


美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)感想
初・梶尾真治です。デビュー作「美亜へ贈る真珠」が読めて幸せです。7つの短編すべてに喪失感がただよっています。切なくも美しいロマンス。SFはこれほどまでにロマンティックになれるのか。”愛”と”時間”の織りなすピュアな恋愛。”時”の制約があるからこそ、逢瀬は狂おしいまでに儚く美しい刹那となりうるのだ。「時尼に関する覚え書」がお気に入り。『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン著)に対するオマージュとして書かれたのですね。恩田陸さんの『ライオン・ハート』とともに私の記憶に深く刻みました。
読了日:9月6日 著者:梶尾 真治

 


へうげもの 三服 (講談社文庫)へうげもの 三服 (講談社文庫)感想
まずは作者・山田芳裕氏にひとこと苦情を申し上げたい。石田三成がかっこわるすぎる。もっと格好良く描いていただきたかった。光秀は格好良く描かれていた。これは良し。さて、「三服」を読み終えて、やはり光秀の無念の最期に泪。そして、今や天下人になろうとする秀吉の孤独をひしひしと感じた。志を胸に大切なものと引き替えにひたすら突き進んだ男の非業の死と数寄者として剽げた者の生、さらに家康のごとくひたすら生き抜くことを考え己を殺した生き方を見るに、人としてどのように生きるべきか、自分はどう生きたいのかを考えさせられた。
読了日:9月7日 著者:山田 芳裕

 


ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)感想
読メで某氏に薦められた小説。この小説に出会うきっかけをくださったことに心から感謝します。復讐の本質は何か。自分あるいは自分の大切な人が受けた理不尽な仕打ちに対し人は復讐する権利を有するのか。何を願って復讐するのか。そして復讐によってその願いは適えられるのか。復讐する者の持つべき覚悟と責任。復讐の報い。罪の報い。命の軽重。愛とは何か。人間の本質は何か。あらゆることを考えさせられる。少年を主人公としたジュブナイルと先入観を持って読み進めたが、平易な文章なのに読むのに思いのほか時間がかかった。これは深い。 
読了日:9月13日 著者:辻村 深月

 


へうげもの 四服 (講談社文庫)へうげもの 四服 (講談社文庫)感想
古田左介あらため古田織部正となり、数寄の頂を目指す。丿貫との出会いで侘び数寄へと方向性を定めた。「侘び」を極め日本一の数寄者と称されたい想いが嵩じるにつれ、ますます「侘び」の境地から離れていく皮肉がおもしろい。一方で秀吉と千利休の考えの食い違いが緊張感を帯びてきた。今後の展開が楽しみだ。 
読了日:9月15日 著者:山田 芳裕

 

 

 


へうげもの 五服 (講談社文庫)へうげもの 五服 (講談社文庫)感想
真のわび数寄を追求する利休。しかし求めるものが崇高すぎてかえって窮屈か。利休の高弟・山上宗二は秀吉の怒りを買い打ち首に。いよいよ秀吉と利休に埋まることのない溝が。三成はいよいよ忍城を水攻めに。そんな中、古田織部は剽げつつ美意識を昇華させ、わび数寄を極めようとする。物語はいよいよクライマックスを迎える予感。それにしても、石田三成を格好悪く描きすぎです、山田さん。三成にももっと華をお願いします。三浦しをんさんの解説には唸った。へうげものの描く世界が「ひとはパンのみにて生きるにあらず」だと看破する鋭さに感服。
読了日:9月15日 著者:山田 芳裕

 


へうげもの 六服 (講談社文庫)へうげもの 六服 (講談社文庫)感想
業を捨てられぬ利休。関白秀吉から娘のお吟も差し出せと命ぜられ、ついに秀吉を亡き者にせんと謀反を企む。秀吉に恭順の意を示せぬ利休はついに堺に閉門。一方、石田治部少輔三成は大徳寺三門の利休木像に言い掛かりをつけ、利休処刑を関白秀吉に進言する。なんだかどんどん三成が悪者に描かれていく。三成ファンの私としては複雑な思い・・・。山田さん、三成をもう少し格好良く描いてくれ~~~! 三成にもっと華を~~~!
読了日:9月16日 著者:山田 芳裕

 


へうげもの 七服 (講談社文庫)へうげもの 七服 (講談社文庫)感想
ついに利休は秀吉から死を賜った。介錯人はなんと古田織部正。ついに古田織部は武を捨てることはできなかった。織部は利休を師と慕う者たちから茶頭筆頭の地位のために裏切ったと非難を受ける。しかし、そんな織部を利休は末期において理解していた。お互い美の追求者の極みにある者同士なればこその理解であったろう。それにしても山田さん、織部介錯させるとは、そこまで史実を曲げていいの? 余談ながら、三成について人の情を解さぬ冷血漢ではなく、うまく喜怒哀楽を表せない不器用な男なのだとの見方には少しばかり救われました。
読了日:9月16日 著者:山田 芳裕

 


へうげもの 八服 (講談社文庫)へうげもの 八服 (講談社文庫)感想
織部は数寄の頂上を極めるため朝鮮へ密航。登窯を視察し量産を準備に入る。しかし太閤秀吉の天下にも落日の気配。時代変革のマグマはいよいよ最高潮に達した。織部よどう動く。といったところで文庫版の既刊本はここまで。講談社によると「文庫版はとりあえず完結。モーニングでの連載はまだまだ続くので九服、十服と続刊の可能性もなくはない」だとぉ?! このはっきりせん態度はなんじゃぁ! 責任者出てこいっ! 出てきて出すか出さんかはっきりせいっ! (怒)
読了日:9月16日 著者:山田 芳裕

 


美の旅人 フランス編 1 (小学館文庫)美の旅人 フランス編 1 (小学館文庫)感想
ただ一度パリを訪れたことがある。ルーブル美術館の前まで行きながら美術館に入らず、パリ三越で家族や知人への土産を買うことで時間をつぶしてしまったことを、今、心から悔やむ。妻、母、妹は私が買って帰ったバッグを見て心から喜んでくれた。しかし、私はそれに費やしたお金を、いやいや、ルーブルに入ることなく費やした時間を心から悔やむのだ。クロード・ロランのセピア色、素敵ではないか。あぁ、後悔先に立たず。ルーブルではないがモネの『印象・日の出』は昨年11月26日に京都市美術館で見ることができた。せめてもの慰めか、あぁ・・
読了日:9月19日 著者:伊集院 静

 


美の旅人 フランス編 2 (小学館文庫 い 31-5)美の旅人 フランス編 2 (小学館文庫 い 31-5)感想
ロマン主義」から「印象派」の誕生への足跡を伊集院氏なりの解釈でたどる。ドラクロワ、コロー、モネ、ゴッホと旅はセーヌを下る。私の大好きな画「パラソルをさす女」(モネ)がカラー写真で登場。私が昨年11月に京都市美術館で観た画は「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」であった。女性の傍らには子供がいたように記憶しているが、この画は女性一人。日傘をさす女性を描いた画はたくさんあるのですね。コローの言葉「優しさの方が、才能よりずっと大切だ。善良な魂があれば作品の中にあらわれるものだから」が素敵です。
読了日:9月20日 著者:伊集院 静

 


美の旅人 フランス編 3 (小学館文庫)美の旅人 フランス編 3 (小学館文庫)感想
不具の画家ロートレックムーラン・ルージュ。かつて絵を愛し優しかった少年が夜の町をさまよい、酒に溺れ、享楽にふける。踊り子や売春婦とともに過ごす日々に感心を寄せた。マネの白、そしてピカソの青。モディリアーニの描く身体の歪みやアーモンドの瞳。画家の人生や内面がどのような形で画に現れるのか。とりわけピカソを観るにつけ、それを考えさせられる。紹介された画の中で最も好きなのはロートレックの「ムーラン・ルージュ・コンサート・バル」。一番印象に残ったのはピカソの「泣く女」であった。
読了日:9月22日 著者:伊集院 静

 


楽園のカンヴァス楽園のカンヴァス感想
画は画家によって描かれる。画家を突き動かすのはPASSION/情熱。そしてその情熱はひとつの物語を紡ぐ。画にまつわる物語は描き手だけが知る物語として、カンヴァスに封じ込められる。幾重もの絵の具に塗り込められるのだ。しかし、封じ込められないほどのPASSION/情熱は時として人に知られ、語り継がれ、やがて伝説となる。そのとき画は永遠の命を獲得する。ヤドヴィガはルソーのPASSION/情熱によって「永遠を生きる」ことになった。それはとても素敵なことだ。人は永遠を獲得するために生き、死んでいくのかもしれない。
読了日:9月26日 著者:原田 マハ

 


美の旅人 スペイン編  1 (小学館文庫)美の旅人 スペイン編 1 (小学館文庫)感想
ゴヤから始まり、ベラスケス、エル・グレコ、そして再びゴヤとスペインの絵画を巡る旅を通じてスペインを、そしてスペイン人を知ろうとする。スペイン人を動かすものは何か。それはスペイン人の血である。血とは感情である。理性ではない。伊集院氏はこの旅を通じて、スペイン人の感情を血の流れる音を聴いたに違いない。それは先日読んだ小説『楽園のカンヴァス』において原田マハ氏が「画家を突き動かすのはPASSION/情熱である」としたのと同義であろう。しかし私にはゴヤが理解できない。スペインは遠い。
読了日:9月29日 著者:伊集院 静

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