佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

11月の読書メーター

2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4976ページ
ナイス数:4027ナイス

 

先月は出張が多かったこともあり、電車の中でたくさん本を読みました。ハズレなく、すべてすばらしい本でした。宇江佐真理さんの髪結い伊三次シリーズとゲイル・キャリガー氏のアレクシア女史を主人公にしたスチームパンク・ファンタジーは続編シリーズを追いかけたいと思う。もちろんスティーヴン・ハンター氏のスワガー・シリーズも。辻村深月氏の他の本も読破したい。辻村氏の小説に登場する人物は、他の作品にも登場することがあるのである意味シリーズもののように読める。シリーズものといえば『謎解きはディナーのあとで』も続編があるようで、第二巻が文庫化されれば読みたい。好きなシリーズができるのは嬉しいのだが、それを読むだけの時間を作るのが大変です。どうやら長生きするしかないようです。(笑)

 

 

幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
なんとも味わい深い短編集です。すぅっと物語の世界に入り込め、そこに浸ることが心地よい。読み進めるうちに登場人物のひとり一人がいとおしく思え味わいが増す。日々の暮らしをひたむきに生き、それぞれ胸に悲しみをもつ市井の人々。彼らはまた優しさと矜持をも胸に秘めている。「幻の声」にはおそらく二つの意味がある。一つは第一編で駒吉が聴いたという声、そしてもう一つは第五編でお文が耳元で聞こえたような気がしたという声「いいのかい? お文・・・・」であろう。とすると、これは捕物帳のかたちをした恋物語なのですね。それも極上の。
読了日:11月1日 著者:宇江佐 真理

 


蘇るスナイパー (上) (扶桑社ミステリー)蘇るスナイパー (上) (扶桑社ミステリー)感想
うまいっ! さすがはハンター氏。戦争の英雄が濡れ衣をきせられ、それを仕組んだ強大な権力を持つ悪の存在をほのめかし、その悪に迫るいとぐちをつかみかけた時、関係する者が虫けらの如く抹殺される。おそらく読者はこの上巻を読んで怒りのボルテージが最高潮に達しているだろう。Come on! Bob the Nailer! 巨悪よ、地獄に堕ちるがいい。<ボブ・リー・スワガー>シリーズのベスト・オブ・ベストという帯の言葉に偽りなしと見た。狩りは始まった。もう誰にも止められない。
読了日:11月5日 著者:スティーヴン・ハンター

 


蘇るスナイパー (下) (扶桑社ミステリー)蘇るスナイパー (下) (扶桑社ミステリー)感想
前々作『四十七人目の男』では日本刀を振り回させ、前作『黄昏の狙撃手』ではカーチェイスをさせたりと、このところちょっとした不満があったが、今作は本来のスタイルに戻った。ボブ・リーの魅力はやはりガン・ファイトですから。類い希な狙撃手としてのボブ・リーを我々は見たいのだ。第一作『極大射程』に比肩するおもしろさ。ページをめくる手が止まりませんでした。大満足。
読了日:11月7日 著者:スティーヴン・ハンター

 


花のあと (文春文庫)花のあと (文春文庫)感想
再読。朝、家を出る時、なんとなく藤沢を読みたいと思い本棚から取り出した。どんな話だったのか記憶が定かでない。一度読んだものの、強烈な印象を残していないので、かえって再読するのに好都合でもある。登場人物が皆、心にある種の哀しみや切ない思いを抱いており、その様が愛おしい。そして藤沢の小説らしく、主人公が己が弱さを知りつつもそれに甘んじることを潔しとせず、矜持をもって生きている。藤沢の本を閉じたとき、いつも私は「世の中、捨てたものじゃない」と清々しい気持ちになる。
読了日:11月7日 著者:藤沢 周平

 


光媒の花 (集英社文庫)光媒の花 (集英社文庫)感想
読んでいて常に私の頭の中にあった言葉がある。それは「身の上」という言葉だ。生まれた家、親、家庭を取り巻く環境、人との出会い、そうしたものがその人の運命として人生に波紋を投げかける。もちろんその波にあらがうことは可能だろう。しかし、完全に波の影響から逃れることなど出来はしない。「身の上」とはそうしたものなのだろう。哀しみの先にあるかすかな光、その光がさした時、慎ましやかな花が咲く。道尾氏はそんな人生を『光媒の花』という題名に込めたのか。「冬の蝶」のサチが「春の蝶」の幸と同じ人物だとしたら救われる。 
読了日:11月10日 著者:道尾 秀介

 


美女と魔物のバッティングセンター (幻冬舎文庫)美女と魔物のバッティングセンター (幻冬舎文庫)感想
吸血鬼と雪女と弁護士と貧乏神が登場する物語。そして吸血鬼はホストで、劇団員で、おしゃれカフェの店長で、お抱え運転士である。雪女は元キャバ嬢で、現在は復讐屋さんで、そのうえ震えがくるほどの美女である。弁護士は同時に占い師であり元兵士でもある。貧乏神はドレッドヘアーのレゲエ男で破壊神である。新宿歌舞伎町にはいたるところに不幸が落ちている。そしてその不幸は自転車のサドル理論で回っている。ハチャメチャと混沌がいつかひとつの物語に収束する。そして結末の驚き。楽しみました。眉間のしわがとれましたよ。
読了日:11月14日 著者:木下 半太

 


謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)感想
肩の力の抜けた本格ミステリですね。ウィットに富んだ会話、ユーモア溢れる語り口、中村佑介氏のカバー・イラスト。しかも主人公は大富豪のお嬢様とその執事。この執事がカッコイイ若い男で切れ者安楽椅子探偵ときた。これだけそろえば売れるはずです。売れないはずがない。この小説の最大の魅力は何と言っても本格推理。そしてそれにもまして読者を惹きつけるのは主人公のお嬢様のキャラだろう。超弩級の大金持ちであることを鼻に掛けず、かといって逆に大金持ちであることにいささかも悪びれることがない正真正銘のお嬢様だ。続編も読みたい。
読了日:11月17日 著者:東川 篤哉

 


舟を編む舟を編む感想
馬締さんの香具矢さんに宛てた恋文にニンマリした。森見登美彦氏の小説『恋文の技術』に延々訥々と綴られた手紙もそうであったが、恋文の要諦は思いの丈を率直に書くことなのだ。かっこ悪かろうと滑稽だろうと私は今あなたに恋するがあまりハチャメチャなのだ、そしてその状態を救うのはあなたしかいないのだということを伝えることが肝心なのだ。(と、私は思う) 素敵な物語を読ませていただきました。言葉と活字を愛する者として、素直にしをんさんの想いを受け止めました。言葉は思考であり、感情であり、記憶であり、道を照らす光なのですね。
読了日:11月18日 著者:三浦 しをん

 


新解さんの謎 (文春文庫)新解さんの謎 (文春文庫)感想
新解さん」は辞書界における「GAMBA大阪」だ。かつてヨハン・クライフはこう言った。「美しく負けることを恥と思うな。無様に勝つことを恥と思え」と。GAMBA大阪はこの名言を地で行っている。そして「新解さん」の身上もまた攻めの姿勢。突っ込みどころ満載の辞書である。普通、辞書は正確を期するあまり守りの姿勢になりがちだ。然るに新解さんにはまったくそのような素振りがない。凡そ辞書らしくない辞書である。本書で赤瀬川氏は知人のS.M嬢と共に新解さんを読み解くことにより、怪しくも知的な妄想を果てしなく繰り広げている。
読了日:11月21日 著者:赤瀬川 原平

 


床屋さんへちょっと (集英社文庫)床屋さんへちょっと (集英社文庫)感想
これまで山本氏の小説を『ある日、アヒルバス』、『カイシャデイズ』、『凸凹デイズ』、『笑う招き猫』と読んできた。悪人が登場せず、温かいまなざしで登場人物それぞれの人生を応援するような物語が大好きで、山本氏を追いかけてきた。さて、本書ですが、これまで読んだものとはやや趣を異にしますが、やはり氏の温かいまなざしは健在。父から引き継いだ会社を二代目で潰してしまった男とその家族の人生を、ちょっとしたエピソードで描き応援しています。読んでいる間、何故か中島みゆきさんの「ファイト」が脳内リフレインされていました。(笑)
読了日:11月23日 著者:山本 幸久

 


アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)感想
<魂なき者>アレクシア・タボラッティはなんと可愛い女性なのだろう。ダイエットなどとつまらぬことには無縁の健康的な女性。意志が強く決然とした茶色い目を持ち、科学者とも普通に知的な会話を楽しめる才女。男に媚びを売ることなど絶対にせず、異性に対するつんけんした態度とは裏腹に、その心のとろけ方たるや半端ではない。いわゆるツンデレの典型である。26歳にしてうぶとは・・・カワイイ・・・。ジャンルとしては、これはSFかファンタジーか。いやいや、これは紛うことなきロマンス。そう、これはスチームパンク・ロマンスだ。
読了日:11月25日 著者:ゲイル・キャリガー

 


白磁の人 (河出文庫)白磁の人 (河出文庫)感想
小説としてはともかく、物語の主人公・浅川巧の生き様に圧倒された。私などは韓国や北朝鮮の言動に折々怒りを覚え、ついつい侮蔑の念を持つこともある。しかし、それはお隣の国の一部であり決して正確に実相を表してはいないことに心すべきだろう。浅川巧氏の祖父の言葉を改めてかみしめたい。「人間の仕事には貴賤などない。人種などというものにも上下はない。人の価値はな、どう生きたか、にあって地位や金銭ではどうにもならん。働いて、本を読んで、自然を大事にする。それだけのことだ」 至言と云うべきだろう。 
読了日:11月25日 著者:江宮 隆之

 


子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)感想
辻村さんはうまいなぁ。はじめばらばらのエピソードを提示しておくことで読者の疑問と興味を引き出し、上巻500ページで少しずつ疑問が解き明かされて全体像が読者の頭の中で実を結ぶ。おそらく読者はその時点で何らかの推論を持つ。私もある推論をたてた。これは辻村さんのミス・ディレクションにまんまと騙されているのか、はたまたこの時点で真実を突きとめてしまったのだろうか。さてさて下巻を読んでそれを確かめてみよう。下巻は563ページ。おそらく中身は濃いだろう。気力に加えて体力も必要だ。よしっ! 
読了日:11月29日 著者:辻村 深月

 


子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)感想
上巻を読んで私なりにたてた推論は基本的な部分で当たっていた。しかし、そうであってなお下巻は意外性の連続、驚きの連続であった。すごいですね。息をもつかせぬ展開に他のことに手が着かず一気読みの563ページ。おまけに途中で泣いてしまいました。そのうえ最後の最後は思いもかけない展開にぶっ飛ぶ始末。結末が分かっていてなお再読、再々読する人が多いことにも納得。まいりました。
読了日:11月30日 著者:辻村 深月