佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

3月の読書メーター

2013年3月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3673ページ
ナイス数:3097ナイス

 

今月はついにロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」を読むことが出来た。待ちに待った『よつばと!12』も読めた。僥倖というほかない。また『先輩と私』、『両性具有迷宮』で森奈津子氏を大研究。若かりし頃読んだ江戸川乱歩人間椅子』も読んだ。このあたりは、かなり怪しい。こうした怪しげなものも私は好きだ。こうしたものもときどき読んで行きたい。読書は堅く凝り固まらず、広がりと遊びがあった方がよい。

 


先輩と私 (徳間文庫)先輩と私 (徳間文庫)感想
森奈津子氏はただものではない。理由は二つ。「マイノリティーのどこが悪い」という開き直りとも取れるあっけからんとした性癖カミングアウト。もう一つは水際だった「羞恥」の表現である。私は男で、しかも性的にはストレートな範疇に納まっていそうである。つまり森氏のいう”異性愛者の成人男性であるオヤジ”であるから、社会を単純化して分析した際には圧倒的強者に分類され、弱者である女性、なかんずくマイノリティーである同性愛者を抑圧する存在なのだ。そんな私でもこの小説に思わず笑わされ、同時に悶々とした気分にさせられるのである。
読了日:3月2日 著者:森 奈津子


神様のカルテ2 (小学館文庫)神様のカルテ2 (小学館文庫)感想
この温かい読後感、さすがです。もちろんそのような小説を浅薄だとか深みがないなどという向きもあるだろう。世の中は不公平と不条理と矛盾と絶望と哀しみに満ちており、「夢見がちな乙女じゃあるまいし、厳しい現実をきれい事の甘ったるい話にすり替えるんじゃねぇ」という辛口意見が聞こえてきそうである。だが良いではないか。どんなに絶望的な状況にあっても人には希望が必要だし、ささやかな幸せが必要だ。そうでなければ生きている意味がない。小説はしばしば「そうあって欲しい夢」を見させてくれる。だから私は小説を好んで読むのだ。
読了日:3月3日 著者:夏川 草介


横道世之介 (文春文庫)横道世之介 (文春文庫)感想
かつて私も親元を離れ一人で学生生活を送ったことがある。本作の舞台は東京、私が住んだ街は神戸。時代も本作の’80年代バブル期に対し、私の場合は’70年代の後半であったので、少しく様相は違うだろう。しかし、生活環境が一変するなかで期待と不安がないまぜになった心持ちというものはおそらく同じに違いない。読んでいて、なにか楽しくもあり、懐かしくもあり、かなしくもあるというなんとも不思議な心持ちであった。そして後に残ったのは、なにやらほんわか温かいもの。それは実態がはっきりせず、曖昧模糊としたものではあるけれど。
読了日:3月9日 著者:吉田 修一


じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (10) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (10) (アクション・コミックス)感想
チエちゃんの先生・花井渉の恋愛が描かれた巻。第十二話「恋する二人の巻き」で花井親子がテツとヨシ江さんのことについて話す場面がある。花井拳骨氏の「ギクシャクしとるやろ。まあテツは今でも恋愛しとるんやな」という言葉につきる。
読了日:3月9日 著者:はるき 悦巳





ドラッカーの教えどおり、経営してきましたドラッカーの教えどおり、経営してきました感想
酒巻社長がサイン入りで送って下さいました。未だ読み込みが浅いためもう一度読み直しながらよくよく考えてみる必要がありそうですが、とりあえず以下のことを心に思い定めたいと考えます。「見当違いでない方向に向かって、達成すべき目的を定め、目的達成のために成すべきことを道理にかなった形で考え実行する。実行にあたってはぶれないこと、人事が肝であること、コミュニケーションが大切であることに心すべし」と。
読了日:3月10日 著者:酒巻 久




よつばと! 12 (電撃コミックス)よつばと! 12 (電撃コミックス)感想
前巻11を12月に読んだばかりで、3ヶ月足らずのうちに新刊が発売になるとは思っていなかった。あやうく見逃すところであった。これまでの巻にまして何気ない日常を描いているだけによつばのかわいさがじんわりと染み入ってくる。体についたペンキがずぅっととれないままになるかもしれないと真剣に考えているよつばがかわいい。もう一度、こんな小さな子供の父親やりたいぞっ!!(笑) 
読了日:3月14日 著者:あずま きよひこ




年刊SF傑作選〈第2〉 (1967年) (創元推理文庫)年刊SF傑作選〈第2〉 (1967年) (創元推理文庫)感想
たんぽぽ娘」を読みたくて古書を探し求めようやく手に入れました。1975/8/8第12版です。「たんぽぽ娘」は素敵な話でした。一目で恋に落ちるということと、変わることなく想い続けるということ。人の心はどちらのかたちも取りうるのだということに改めて思いいたり、だからこそ相手を大切に思う心の貴さを痛切に感じました。「おとといはウサギを見て、きのうは鹿を見て、きょうはあなた」――この言葉をしばらくは忘れられそうにありません。 河出書房新社たんぽぽ娘奇想コレクション)』(5月発売予定)を予約注文しました。
読了日:3月24日 著者:



人間椅子  江戸川乱歩ベストセレクション(1) (角川ホラー文庫)人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション(1) (角川ホラー文庫)感想
一度見聞きしただけで忘れられない物語がある。私にとってそれは昔、オーソン・ウェルズ劇場で見た『猿の手』という物語と本書のタイトルにもなっている江戸川乱歩氏の小説『人間椅子』である。最近『ビブリア古書堂の事件手帳4』(三上延・著)を読んで、久しぶりに江戸川乱歩を読みたくなった。子供の頃に読んだ本は手元にないので本書を買い直した。あらすじは頭に入っていたが改めてわくわくどきどきしながら読んだ。あやしいフェティシズムとエロティシズム。そして危殆。罪の意識を感じながらこの物語を読んだ子供の頃を懐かしく思い出した。
読了日:3月27日 著者:江戸川 乱歩


黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)黒く塗れ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
物語には二とおりある。こうあって欲しいという結末の話とそうでない話。宇江佐さんは世の中そうあって欲しいと思っても、そうはならないことがあるということを知っている。物語を書きながら、何とか救ってやりたいと泣きながら、なすすべもなく運命に押し流されてしまう男と女を描いたのだろう。「畏れ入谷の」はそんな話だ。いっぽう、読み手のこうあって欲しいという気持ちに応えてくれた話もあった。「慈雨」である。これも滅法良かった。宇江佐さんなら「夢おぼろ」の美雨と監物にもとびきりの結末を用意してくれるに違いない。
読了日:3月28日 著者:宇江佐 真理


両性具有迷宮 (双葉文庫)両性具有迷宮 (双葉文庫)感想
な、なんだこれはっ! お笑い百合SM小説が身上の、異端にして耽美主義のレズビアン作家(ひょっとしてバイセクシャル?)の森奈津子を主人公としたお笑い百合SF小説ではないかっ! おふざけもたいがいにしなさい。西澤保彦はお初です。調べてみると『七回死んだ男』でSF設定で本格推理作品が成立することを示されたお方とか。そのようなやんごとなきお方が、SF設定でおちゃらけ百合推理小説をお書きになるとは・・・。しかも実在作家を主人公とするというエポックメーキングな作品。チャレンジャーでいらっしゃる。それにしても私は・・?
読了日:3月31日 著者:西澤 保彦


じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (11) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (11) (アクション・コミックス)感想
今作では花井渉先生の婚約者がラグビーのコーチで大阪府警のチームを指導しているという設定。チエちゃんを含む西荻地区の面々の混成チームが大阪府警のチームと練習試合をする。ラグビーの試合をいいことに、警察官をボコボコにいてまう痛快感で読ませる。そんな中に、警察幹部(部長)の中年の哀愁が漂う純愛話も挿入されている。その実らぬ恋のお相手は西荻小町ことヨシ江さんとは。市井に暮らす人の純な心の滑稽さと哀しみ、このテイストこそじゃりチエの真骨頂。あぁ、切ない話や・・・。
読了日:3月31日 著者:はるき 悦巳