『落語と私』(桂米朝:著/文春文庫)を読みました。
実に読みやすい文章です。些か大げさな言い方ですが、そのわかりやすさ、美しさはノーベル文学賞の大江健三郎氏の文章の対極にあると思います。ご存じのとおり大江氏は難解な言葉で持って回った文章を書かれます。私は若かったころこそそれをありがたがって「スゴイ」と思っていましたが、様々な人の文章を読み重ねた今、大江氏の文章を評価する気にはとてもなれないのです。それに比べ、米朝師匠の文章のなんと麗しいことか。米朝師匠の仰りたいことがスウッと入ってきます。読んでいて心地よい。このあたりは人のあり方の問題とも思えます。私、かねがね米朝師匠のお人柄に憧れております。(大江さんゴメンナサイ)
最後に出版社の紹介文を引きます。
落語の歴史、寄席の歴史、東京と上方のちがい、講談、漫談とのちがい、落語は文学か、女の落語家は何故いないか等々、当代一流の落語家にして文化人が、落語に関するすべてをやさしく、しかも奥行き深い蘊蓄をかたむけて語る。