佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ダックスフントのワープ』(藤原伊織・著/文春文庫)

ダックスフントのワープ』(藤原伊織・著/文春文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。 

 

 

ダックスフントのワープ (文春文庫)

ダックスフントのワープ (文春文庫)

 

 

十数年ぶりの再読です。藤原伊織のデビュー作。

純文学です。哲学的です。気が利いた会話が素敵です。あたかも村上春樹を読んでいるかのような気分でした。本作が上梓されて八年後に藤原文学の金字塔ともいうべき『テロリストのパラソル』が上梓される。『テロリストのパラソル』はハードボイルド・ミステリにカテゴライズされる。純文学からミステリにワープしたわけだが、しかし実は表題作『ダックスフントのワープ』にもハードボイルドの萌芽を見ることができる。その短編小説の中の寓話で、ダックスフントは大好きな少女の笑顔のために[邪悪の意思の地獄の砂漠]にワープし、そこで自ら課した規範に従って困難に立ち向かう。それがダックスフントの「誇りの問題」なのです。名作です。