ウェルズの日記

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『ダナエ』(藤原伊織・著/文春文庫)

『ダナエ』(藤原伊織・著/文春文庫)を再読しました。

何も失ってはいないが、同時に初めからすべてを失っている男。かっこいいです。

作中に引用されている萩原朔太郎の詩「乃木坂俱楽部」の一部をを引用します。

わが思惟するものは何ぞや
すでに人生の虚妄に疲れて
今も尚家畜の如くに飢えたるかな。
我れは何物をも喪失せず
また一切を失い尽せり。

 

ダナエ (文春文庫)

ダナエ (文春文庫)

 

 

「ダナエ」とはレンブラントの最高傑作ともいわれる絵画。エルミタージュ美術館に所蔵されている。1985年にエルミタージュ美術館で起きた「ダナエ」に硫酸がかけられ、ナイフで切りつけられた事件に似通った事件から、今や世界的有名画家になった男の過去が明らかになっていく。犯人とその動機を突き止めるミステリのかたちをとりながら、切なく深いラブ・ストーリーとなっている。『ひまわりの祝祭』にも似たテイストを持つ短編の傑作。