佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『再起/ディック・フランシス[Dick Francis](著) , 北野寿美枝 (翻訳)』(ハヤカワ文庫)を読む

 久々にディック・フランシスを読みました。『再起』(原題:UNDER ORDERS)です。競馬シリーズ最新刊です。しかも、主人公はこのシリーズに過去3回登場し、今作が4回目の登場となるシッド・ハレーです。ディック・フランシスの競馬シリーズ・ファンなら読む前から「きっと面白い」と期待も高まろうというもの。

 正直なところ、読む前に不安な点が2点ありました。一つは翻訳者が菊池光氏から北野寿美枝氏に変わったこと。菊池氏は2006年6月16日にご逝去のため訳者が変わるのはやむを得ないこと。とはいえ、菊池氏の名訳が読めないだけでなく、文章の香りが変わってしまってはシリーズ・ファンとしては辛いなと不安を抱いたのである。しかし、これは杞憂に終わった。北野氏の訳は菊池氏の訳に勝るとも劣らない名訳でした。もう一つの不安は前作『勝利』の出来があまり良くなかったことです。私はこれを2007年2月26日に読み終えているのですが、当時、読後感をメモしたものを読むと「ディックフランシスの小説にしては面白くない。主人公の魅力も今ひとつ。いつもは好もしいと思っていた菊池光の翻訳も読みにくいと感じられる始末。」と書いている。ディック・フランシスも歳をとったのかなと寂しい想いであった。ですから、もしも今回、シッド・ハレーがつまらない男に描かれていたらどうしようと思ったのです。しかし、これも杞憂、作者に大変失礼な心配をしたものです。やはり、シッド・ハレーはカッコイイ男でした。まさに『再起』の邦題がぴったりくる良書でした。

 

背表紙の紹介文を引いておきます


元騎手で調査員のシッド・ハレーは、上院議員のエンストーン卿から持ち馬の八百長疑惑に関する調査を依頼された。しかしその直後八百長への関与を疑われた騎手が死体となって発見され、殺人容疑で逮捕された調教師も証拠不十分で釈放されたあと、不可解な自殺を遂げてしまう。真相究明に奔走するハレーだが、謎の刺客が最愛の恋人マリーナを襲う。不屈の男シッド・ハレーを四たび主役に迎えて、競馬シリーズ待望の再開。


 

蛇足ながら、これまで読んだディック・フランシスの競馬シリーズを整理しておきます。

原書出版年、邦題、原題、(日本出版年)★印はシッド・ハレーが主人公のもの
 1. 1962年 本命 Dead Cert (1968年)
 2. 1964年 度胸 Nerve (1968年)
 3. 1965年 興奮 For Kicks (1976年)
 4. 1965年 大穴 Odds Against (1967年) ★
 5. 1966年 飛越 Flying Finish (1976年)
 6. 1967年 血統 Blood Sport (1969年)
 7. 1968年 罰金 Forfeit (1977年)
 8. 1969年 査問 Enquiry (1970年)
 9. 1970年 混戦 Rat Race (1971年)
10. 1971年 骨折 Bonecrack (1978年)
11. 1972年 煙幕 Smokescreen (1973年)
12. 1973年 暴走 Slayride (1974年)
13. 1974年 転倒 Knockdown (1975年)
14. 1975年 重賞 High Stakes (1976年)
15. 1976年 追込 In the Frame (1982年)
16. 1977年 障害 Risk (1982年)
17. 1978年 試走 Trial Run (1984年)
18. 1979年 利腕 Whip Hand (1985年) ★
19. 1980年 反射 Reflex (1986年)
20. 1981年 配当 Twice Shy (1983年)
21. 1982年 名門 Banker (1988年)
22. 1983年 奪回 The Danger (1989年)
23. 1984年 証拠 Proof (1985年)
24. 1985年 侵入 Break In (1991年)
25. 1986年 連闘 Bolt (1992年)
26. 1987年 黄金 Hot Money (1993年)
27. 1988年 横断 The Edge (1989年)
28. 1989年 直線 Straight (1990年)
29. 1990年 標的 Longshot (1996年)
30. 1991年 帰還 Comeback (1992年)
31. 1992年 密輸 Driving Force (1998年)
32. 1993年 決着 Decider (1994年)
33. 1994年 告解 Wild Horses (1995年)
34. 1995年 敵手 Come to Grief (1996年) ★
35. 1996年 不屈 To the Hilt (1997年)
36. 1997年 騎乗 10 LB. Penalty (2003年)
37. 1998年 出走 Field of Thirteen (1999年)
38. 1999年 烈風 Second Wind (2000年)
39. 2000年 勝利 Shattered (2001年)
40. 2006年 再起 Under Orders (2006年12月)

 

ちょうど40冊目の節目でした。この後、単行本では『祝宴 Dead Heat』と『審判 Silks』が出版されているのでもうすぐ文庫化されるでしょう。待ち遠しいことです。