てんしん
店の名は「てんしん」。
うまい玉子焼きを喰わせる店だ。
玉子焼きといっても明石焼きといわれるたこ焼きです。
新年の挨拶回りで大阪、神戸を廻り、姫路に向けて帰る途中であったが、
少し時間があったので東二見の事業所のスタッフの顔を見ようと東二見駅を下車。
もう、夕暮れ時で日が沈もうとしていた。
年明け初出勤のスタッフの笑顔は屈託なく、安心した。
皆、良い年を迎えたと見える。
おっと、「てんしん」の話である。
事業所からの帰り道、
もう18時近くなっていたので「小腹が空いたな」と思いながら踏切を渡っていると、
私のiPodからビートルズの「オクトパス・ガーデン」が流れてきた。
天啓とはまさにこうしたことを云うのであろう。
かくなる上は蛸を食わずばなるまい。
私は迷わず「てんしん」の暖簾をくぐった。
お母さん三人が店を切り盛りしていた。
席に着くやいなやすかさず「玉子焼きとビール(大ビン)」を注文。迷いはない。
出てきた玉子焼きは15個が「上げ板」のうえで行儀良く等間隔に列んでいる。
そう、この店では木目の見える「上げ板」に15個なのだ。
ちなみに、すぐ近くにある「田村」では赤い「上げ板」に20個です。
味わいもわずかに違うのだが、ここでそれを論ずる気はない。
15個がいいか、20個がいいか、それもここで論ずる気はない。
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熱くふわふわした球体は地球の重力にほんの少し負けつつ、
「早く私を食べて。もうだめ、私もうだめ、早く~」と板の上で悶えているかに見える。
出汁につけて口に入れると、「だめよだめよ」と言いながら口の中でとろけてゆき、
ふんわり卵の味わいが口いっぱいに拡がる。
蛸をぎゅっと噛むと弾力のある歯ごたえに、蛸の旨味がたまらない。
と同時に私の右手は流れるような動作でビール瓶へと伸び、
適度な泡を立ててコップに注いでいる。このあたりの動作は年季が入っているのだ。
コップから溢れんばかりの泡を鼻の先につけながら、ビールをウグウグウグと飲み干す。
玉子焼き500円+ビール(大)500円=1000円丁度で贖う至福のひととき・・・