佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『STORY BOX Mar.2011 vol.19 七色』

2011/05/24

 

 ふいに車内が虹色に変化した。
「あっ」と声をあげて視線をめぐらせば、車外もまた七色であった。
 かすかな列車の振動とともに、降り注ぐ光が、赤、橙、黄、緑、次々と色を変えていく。やわらかな日差しは紅葉を照らし、銀杏を輝かせ、ここが限りと色彩の雨を降らせる。二両編成の小さな列車は、その幻想の森の中を迷いなく風を切って進んでいく。

                                            (本書 P36より)


 『STORY BOX Mar.2011 vol.19 七色』を読みました。

 

 

  

 夏川草介氏の「七色」が特別掲載。読んでみれば既刊『青森へ STORY BOX JAPAN Nov.2010』に掲載された「寄り道」と同じく東々大学准教授・古屋神寺郎とそのゼミ生・藤崎千佳コンビものでした。前作は青森が舞台で心地よい余韻を残す作品だった。もっと読みたいと思っていたが願いが叶った。僥倖に恵まれ幸せである。森見登美彦氏の「モダンガール・パレス」が第二回目にして私の心を鷲づかみ。早く続編が読みたい症候群、森見中毒発症中! 黒野伸一氏の「限界集落株式会社」、松尾清貴氏の「偏差値70の野球部」(松尾清貴)がラストスパートか。グイグイ読ませる。ところで Vol.11から「返信」(野島伸司)の掲載が無い。もう打ち切ってしまったのか? 気になる。小学館さんどうよ?

 

「七色」(夏川草介
 冒頭、引用した列車が「紅葉のトンネル」をくぐって走る場面。昨年秋、叡山電鉄に乗って経験してきました。鞍馬と岩倉実相院で見た紅葉は素晴らしいものでした。物語の舞台となった叡山電鉄沿線の七色に染まる様を思いうかべながら、ちょっぴり悲しく、ほっこり心温まる話を読ませていただきました。夏川草介氏、私の好きな作家になりそうです。『神様のカルテ』是非とも読まねば……

 

 


北上次郎の本の話」(第十九回「学生」について)
 今回も読みたくなってしまう本の紹介。笹生陽子氏の『ぼくは悪党になりたい』(角川文庫)、瀬尾まいこ氏の『図書館の神様』(ちくま文庫)を読みたい本に追加。私は「トイレの神様」より「図書館の神様」が好きだ。

 

「モダンガール・パレス」(森見登美彦
 第二回
 失踪した管理人・前田さんの若い頃の写真を発見。法然院学生ハイツの前で撮ったものだ。なんとその写真には先日見かけた黒真珠の瞳を持つ乙女が写っていた。どういうことなのか。しかもその少女が宵山の真ん中でネグリジェ姿で寝ているのを発見。モダンガール・パレスには戻らない。どこか眠れるところに連れて行けという。おぉ! 第二回にして物語は急展開を見せる。


「結婚」(あさのあつこ
 六人目。山末瑛子。
 新婦、萌恵の実の母。萌恵を小さい頃に捨て去った母。許されることではないと分かっていながら……。萌恵の「生まれてきてよかった…」の一言が泣かせる。


「誤飲」(仙川環)
 第四回。
 カウンセラー林崎洋子の禁煙。果たして林崎は禁煙に成功するのか。理想の伴侶を見つけられるのか。


「候補(リスト)」(五條瑛
 第十五回。
 作中の一節「これはどういうことだろうか。」に、「訊きたいのはこっちだっ!」と思わず叫んでしまった。


限界集落株式会社」(黒野伸一)
 第八回。
 大金を集め大勝負に出た止村に大事件が勃発。大ピンチ!!


「偏差値70の野球部」(松尾清貴)
 第十五回。
 秋季神奈川県大会の地区予選が開幕。偏差値70の頭脳の編み出した新セオリー野球は強豪鶴ヶ丘商業高校に勝ってしまう。


「狗賓童子の島」(飯嶋和一
 第十九回。
 前前前前前前前前前前前前前々回より連載を細切れに読むのは無理と判断し飛ばしたまま。飯嶋さんゴメンナサイ。