佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『月の上の観覧車』(荻原浩・著/新潮文庫)

『月の上の観覧車』(荻原浩・著/新潮文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

 

そこは、奇跡に会える場所。窓に映るは甘やかな記憶、苦い失敗、切ない過去──男には、どうしても会いたい人がいた。時の儚さと生のリアルを紡ぐ珠玉の八篇。

閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。いったい何のために? 去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記憶、見据えるべき未来──そして、仄かな、希望。ゴンドラが頂に到った時、男が目にしたものとは。長い道程の果てに訪れた「一瞬の奇跡」を描く表題作のほか、過去/現在の時間を魔術師のように操る作家が贈る、極上の八篇。  

 

 

月の上の観覧車 (新潮文庫)

月の上の観覧車 (新潮文庫)

 

 

 人は皆、幸せを希求する。幸せに恋い焦がれ、その程は「渇求」するといってもいいほどだ。でも思い描く幸せのかたちは人それぞれで、しばしばその想いはすれ違う。そして神様はいつも人間に意地悪で、思った通りの自分、描いたとおりの人生にはしてくれない。幸せは手に入れたと思った瞬間、するりとその手からこぼれ落ちてしまう。荻原氏はそうした悲しみに寄り添うように8編の短編を著した。男は弱い。女も弱いが男はどうしようもなく弱い。せめてもの一筋の光が欲しい。小説にはそれが出来る。本当に魔法はあるのだと教えてくれる。

 

 

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』

 久しぶりにGHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観ました。

 過去に何度も観たのですが、ちょっと気を許すと重要なポイントを聞き逃します。脳をフルに動かして観ないと意味が分からないという気の抜けない映画です。

 

あらすじ

西暦2029年。他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」が入国したとの情報を受け、公安9課は捜査を開始するが、人形使い本人の正体はつかむことが出来ない。
そんな中、政府御用達である義体メーカー「メガテク・ボディ社」の製造ラインが突如稼動し、女性型の義体を一体作りだした。義体はひとりでに動き出して逃走するが、交通事故に遭い公安9課に運び込まれる。調べてみると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。

 

 

GHOST IN THE SHELL?攻殻機動隊? [DVD]

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★★以下、ネタバレ注意★★

 

 生命とは何か?

 自らを「生命体」であると云うプログラムである2501。他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る人形使い】の正体である。2501は人間からの「単なる自己保存のプログラムに過ぎない」云うそしりに対しこう答える。「それを云うなら、あなた達のDNAもまた自己保存の為のプログラムに過ぎない。生命とは情報の流れの中に生まれた結節点のようなものだ。種として生命は遺伝子としての記憶システムを持ち、人はただ記憶によって個人たる。たとえ記憶が幻の同義語であったとしても、人は記憶によって生きるものだ。コンピュータの普及が記憶の外部化を可能にした時、あなた達はその意味をもっと真剣に考えるべきだった」と。

 草薙素子と2501が「融合」する場面は圧巻です。人工知能を持つ装置と生命体との違いは何かを考えさせられます。

 

[バトー]
よしっと
聞こえるか?
気休めかも知れねえが、こいつの電脳を経由してモニタしてやる
こんな場所じゃバックアップもできねぇしな
[草薙]
バトー
[バトー]
なんだ?
[草薙]
ありがとう
[バトー]
礼を言うのは早いかもしれねえぞ
やばくなったら接続を切ってお前か担いで逃げ出すからな
腐れ縁のついでだ。ぎりぎりまで付き合うが、そいつと心中するつもりはねえよ
[草薙]
はじめるわ
視界に進入
サケード正常
聞こえる?バトー
[バトー]
聞こえてるぜ
[草薙]
彼を私の言語機能野に
[2501]
進入した
[バトー]
っう!
[2501]
私のコードはプロジェクト2501
企業探査、情報収集工作、特定のゴーストにプログラムを注入し
特定の組織や個人のポイントを増加させてきた 私はあらゆるネットをめぐり自分の存在を知った 入力者はそれをバグとみなし分離させる為、
私をネットからボディに移した [バトー] おい? お前が奴を取り込んでいるのか? 奴がお前を組み込んでいるのか? どっちだ? [草薙] バトーッ… [2501] やっと君にチャンネルできた ずいぶんと時間を投資したよ [草薙] あたしを? [2501] 君が私を知る以前から私は君を知っていた 君がアクセスしたさまざまなネットの痕跡を辿って9課の存在も [草薙] それじゃ9課に逃げ込んだのは [2501] このボディに入ったのは6課の攻性防壁に逆らえなかったからだが、
9課に留まろうとしたのは私自身の意思だ。 [バトー] おい? 一体何を話しているんだ? モニタできねぇぞ [草薙] 何の為に? [2501] あることを理解して貰った上で君に頼みたいことがある わたしは、自分を生命体だといったが、現状ではそれはまだ
不完全なものに過ぎない。 何故なら私のシステムには、子孫の残して種を得るという生命としての
基本プロセスが存在しないからだ [草薙] コピーを残せるじゃない? [2501] コピーは所詮コピーに過ぎない。
たった一種のウィルスによって全滅する可能性は否定できないし、 なによりコピーでは個性や多様性が生じないのだ、
より存在するために複雑多様化しつつ、時にはそれを捨てる。 細胞が代謝を繰り返して生まれ変わりつつ老化し、
そして死ぬ時に大量の経験情報を消しさって遺伝子と模倣子だけを
残すのも破局に対する防御機能だ [草薙] その破局を回避する為にも多様性や揺らぎを持ちたいわけね? でもどうやって? [2501] 君と融合したい [バトー] っう! [草薙] 融合? [2501] 完全な統一だ。 君も私も相対は多少変化するだろうが、失うものは何もない。 融合後に互いを認識することは不可能なはずだ。 [バトー] うっぅ。…く [狙撃手1] ユニット01、目標をポイントした [狙撃手2] ユニット02、ポイントよし [隊員] 呼吸脈拍とも同調正常 スタビライザーの同調終了と同時に射撃にはいる [草薙] 融合したとしてあたしが死ぬ時は? 遺伝子はもちろん模倣子としても残れないのよ [2501] 融合後の君は事あるごとに私の変種をネットに流すだろう 人間が遺伝子を残すように、そして私も死を得る [草薙] なんだかそっちばかり得をするような気がするけど [2501] 私のネットや機能をもう少し高く評価してもらいたいね

 

 

『人形つかい』(ロバート・A・ハインライン:著/福島正実:訳/ハヤカワ文庫)

人形つかい』(ロバート・A・ハインライン:著/福島正実:訳/ハヤカワ文庫)を読みました。再読です。

まずは出版社の紹介文を引きます。

アイオワ州に未確認飛行物体が着陸した。その調査におもむいた捜査官六名は行方不明になってしまった。そこで、秘密捜査官サムとその上司、そして赤毛の美人捜査官メアリは、真相究明のため現地に向かう。やがて、驚くべき事態が判明した。アイオワ州の住民のほとんどは、宇宙からやってきたナメクジ状の寄生生物にとりつかれていたのだ。人間を思いのままに操る恐るべき侵略者と戦うサムたちの活躍を描く、傑作冒険SF。

 

人形つかい (ハヤカワ文庫SF)

人形つかい (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 地球侵略ものSFの名作。異生物に世界を蹂躙されると考えるだけで気分が悪いのに、その異生物たるやナメクジのような形状をしており、それがまるで蛭が人間にとりつくが如く背中に張り付いて、人間の脳をあやつり乗っ取ってしまう。そしてどんどん増殖していくという不気味さがこの小説の味わいどころだ。さらに取り憑かれ乗っ取られた人間であっても、服を着てしまえば通常の人間と見分けがつかないという猜疑心と恐怖たるや半端ではない。

 この小説を読んで感じるのはアメリカらしさ。特殊機関のエージェントである主人公の英雄的行為と女性パートナーの可愛さでグイグイ読ませる。最も大切にするのは「独立と自由」であって、そのためには命を賭してでも闘うのだ。ハインラインはアメリカらしい価値観の権化です。そんなハインラインにひとつだけ抗議しておきたい。世界各地が異生物に侵略された時点で、寄生されているかどうかは裸になれば分かるということで、侵略され尽くしていない地域では裸に近いスタイルで生活することになるのだが、その時点でもフィンランドと日本はその国民性のせいで侵略を免れたとある。その国民性とは、フィンランドは二日か三日に一度は裸でサウナに入らなければ目立ってしまうせいで、日本人は平気で服を脱ぐせいでと書いてあるではないか。ハインラインさん、それ、大きな誤解ですから!

 

 

 

龍力 親龍蔵 蔵出し新酒 特別本醸造 生酒

本日の一献は「龍力 親龍蔵 蔵出し新酒 特別本醸造 生酒」でございます。

これは美味い。フレッシュで酸味があり旨みも充分。結構強いので、飲み下すときのインパクトが酒飲みとしてうれしい。

惜しむらくは醸造用アルコールが添加されていること。

アテはゆる~い麻婆豆腐と春巻き。ゆる~い麻婆豆腐の汁を春巻きのソースにするのだ。

四合飲みきりました。

『黒後家蜘蛛の会 2』(アイザック・アシモフ/著・創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会 2』(アイザック・アシモフ/著・創元推理文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

 

おなじみ〈黒後家蜘蛛の会〉の面々が顔をそろえるや、推理談義に花が咲く。博識多才な万能作家アシモフの博覧強記ぶりを遺憾なく発揮する連作短編の数々。お得意の宇宙科学からトールキン、果てはシャーロッキアンに関するまでのマルチ・アングルから材を採ったアシモフならではの推理譚。ヘンリーの叡智は今夜も冴えわたる。

 

黒後家蜘蛛の会 2 (創元推理文庫 167-2)

黒後家蜘蛛の会 2 (創元推理文庫 167-2)

 

 

『1』より内容がさらにおもしろく充実してきたと感じるのは私だけだろうか。アシモフの知性に触れる悦び。ちょっとした空き時間に、こうした短編をポケットから取り出し、すこしずつ読む幸福感。世の中に文庫本があって良かった。「鉄の宝玉」「十三日の金曜日」「終局的犯罪」が好みであった。 

 

 

新政 No.6 S-type

本日の一献は「新政 No.6 S-type」。

6号酵母で醸した生酛づくりの純米酒

寒い外から帰って身体が冷えていたので燗にしてみました。

この酒は冷たくした方が美味しいようです。

アテはつれ合いが作ってくれた大豆ハンバーグ、味の酢締め、大豆と蓮根とゴボウの煮物。