ひと粒の宇宙
いともたやすく言葉は凍りつく。
夜の路地裏で何の気なしにつぶやいたひとことが、
口から放たれた数秒後に路上で結晶する。
曇ったレンズの磨き方(吉田篤弘)より
『ひと粒の宇宙』(角川文庫・アンソロジー)を読みました。
裏表紙の紹介文を引きます。
ページを繰れば、てのひらの上に広がる∞(無限大)―。わずか10数枚の原稿用紙に展開される、ドラマティックな小宇宙。祖父の通夜の席に忽然と現れた猫(「ミケーネ」)。単身赴任最後の1日(「それでいい」)。すり抜けてゆく固有名詞(「名前漏らし」)…。当代きっての匠の筆30作が競演する、この上なく贅沢なアンソロジー!所要時間各数分、ジャンル横断現代文学・各駅停車の旅。
豪華な面々によるショート・ショート。
ミケーネ(いしいしんじ)/おねがい(石田衣良)/仔犬のお礼(伊集院静)/永遠の契り(歌野晶午)/ピクニック(大岡玲)/神様捜索隊(大崎善生)/目覚まし時計の電池(片岡義男)/立ち話(勝目梓)/夜尿(車谷長吉)/猫雨(玄侑宗久)/名前漏らし(小池昌代)/焼き鳥とクラリネット(佐伯一麦)/あり得ること(佐野洋)/それでいい(重松清)/たすけて(高橋克彦)/凍りつく(高橋源一郎)/パリの君へ(高橋三千綱)/pearl parable(嶽本野ばら)/出世の首(筒井康隆)/悪夢─或いは「閉鎖されたレストランの話」(西村賢太)/関寺小町(橋本治)/繭の遊戯(蜂飼耳)/義足(平野啓一郎)/あたしたち、いちばん偉い幽霊捕るわよ(古川日出男)/雛(星野智幸)/樫の木の向こう側(堀江敏幸)/コイン(又吉栄喜)/彼女の重み(三田誠広)/globefish(矢作俊彦)/曇ったレンズの磨き方(吉田篤弘)
短い物語だけにエッセンスが抽出され裸の作者が見えるような気がする。私が好ましいと思ったのは「ミケーネ(いしいしんじ)」、「おねがい(石田衣良)」、「パリの君へ(高橋三千綱)」、「曇ったレンズの磨き方(吉田篤弘)」。逆にそうでもないなと思えるのは、「永遠の契り(歌野晶午)」「凍りつく(高橋源一郎)」といったところ。作品の優劣ということではなく、あくまで好みの問題ですが・・・・・