佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

10月の読書メーター

10月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2585ページ
ナイス数:1529ナイス

先月もたくさんのナイスをいただきました。読書の励みになります。ありがとうございました。

 


真贋 (講談社文庫)真贋 (講談社文庫)
読んでみて意外に簡単明瞭でした。しかし、文体がおかしい。私が記憶している氏の文章とは明らかに違う。幾分中身が薄いというか、思ったほど深くないというか、そのような印象です。なるほど、これはインタビューの書き起こし本なのですね。それにしても流石は吉本隆明氏、読んでいて目が開かれることが随所にある。氏の本を読むと物事を考えるうえでの姿勢というか、態度を学ぶことができる。ただ一点、政治に対する見方を除いてはという条件付ではあるが。政治に対する見方において、私は氏とは相容れない部分がある。
読了日:10月08日 著者:吉本 隆明

 


ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)
金でどれだけのことができるか、金が人生にどれほど重要な意味を持つかを充分に知りつつも、天下り先に居座るために気に入らないヤツにおもねったりしない。何ら世の中のためにならず、苦労もしないで甘い汁を吸うことを潔しとしない。「金があるだけが幸せじゃねえ。オレたちゃ誇り高く生きる」とばかりに凛と姿勢を正す姿が痛快です。
読了日:10月10日 著者:浅田 次郎

 


日経おとなの OFF (オフ) 2011年 09月号 [雑誌]日経おとなの OFF (オフ) 2011年 09月号 [雑誌]
私は本格ミステリよりハードボイルド派なので、ちょっとハズレ。しかし『サトリ』『謎解きはディナーのあとで』『三つの棺』『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』『鬼畜の家』は読みたい本に登録。いつ読めるか分からないけれど……
読了日:10月10日 著者:

 


長く素晴らしく憂鬱な一日 (角川文庫)長く素晴らしく憂鬱な一日 (角川文庫)
私小説といってよいのだろう。エッセイにも似た文体だが椎名誠をして昭和軽薄体と言わしめたものとはテイストが違う。作品全体を覆う暗さはなにゆえか。無言電話に午後三時の人妻・夕子もしくは沙織もしくは志津乃、屋上給水タンクの中のゴケアオミドロ、ブルータスのサワダ、別居中の妻、右翼のタジミヨシオ、南米産の大蛇その名もクサカ・シノブ、白濁鰐目男・沢野ひとしカフカの変身ざわざわ虫と得体の知れない有象無象が頭の中に棲む。今日もシーナはある種の憂鬱を身に纏いながら新宿シルクロードぬめぬめルートの旅人となる。(再読)
読了日:10月15日 著者:椎名 誠

 


この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)
 お金の大事さ、お金のできること、お金がないということがどういう事か、そうしたことを知った上で、いちばん大事なのは「カネ」を持つことではなく「カネ」をなくすことへの覚悟なのだと言っているのではないかと思いました。「カネ」の意味、「カネ」の力、「カネ」の怖さを考え尽くしたからこそ「カネ」の無い状態に陥ったときの覚悟ができる。そしてその覚悟のむこうに見えてきた境地が巻末にある谷川俊太郎氏からの「何がいちばん大切ですか?」という質問に対する答えだ。それは「かぞくとしごと」。「カネ」ではない。
読了日:10月22日 著者:西原 理恵子

 


ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)
下宿ものとして椎名誠氏の名著『哀愁の町に霧が降るのだ』と双璧をなすといって過言ではない。椎名氏の住んだ「克美荘」総武線小岩駅下車徒歩7、8分、家賃5500円、六畳一間。高野秀行氏の住む「野々村荘」早稲田大学門徒歩5分、家賃1万2千円、三畳一間。ちなみに私が学生時代住んだのは「さゆり荘」、神戸商科大学門徒歩10分、家賃8千円、三畳一間。パンの耳をかじりながら、酒盛りだけは欠かさなかった。ボロは着ててもココロの錦。生まれ変わったら早稲田に入って探検部入部か京大に入って青龍会入会と固くココロに誓う私である。
読了日:10月23日 著者:高野 秀行

 


笑う招き猫 (集英社文庫)笑う招き猫 (集英社文庫)
やはり山本幸久氏の「お仕事小説」にハズレはありません。漫才師として食っていくことは楽じゃない。世の中に吹く風は厳しく冷たい。様々な困難に遭遇しながらも、くじけずいじけず真正面から笑いと向き合う二人。その姿は清々しく、人として仕事に対する姿勢はかくあるべしというに相応しいものだ。山本氏は読者に対し、真っ向勝負の直球をど真ん中に投げ込んでくる。そしていつも感じるのは、山本氏が登場人物たちに注ぐ視線は常に暖かく優しいということ。読者は山本氏のそんな視線を感じることで、山本氏の人柄に惚れ込んでしまうのだと思う。
読了日:10月23日 著者:山本 幸久

 


街場の現代思想 (文春文庫)街場の現代思想 (文春文庫)
内田氏が様々な疑問や相談に対し、論考を披瀝する形で記されている。我々が普段、常識と考えていることが実は全くの勘違いであって、単なる思いこみに過ぎなかったことに気付かされる。自分がこれまで如何に一般に常識と思われていることを刷り込まれ、そのことが物事の本質を視る障害になっていたかに気づき愕然とする。しかしそれはたいへん痛快な経験である。読みながらハッと思った箇所に付箋をつけていったが、それは18カ所にも及んだ。何度も読み返すべきかもしれない。『街場の教育論』その他のご著書についても是非読ませていただきたい。
読了日:10月23日 著者:内田 樹

 


陽だまりの彼女 (新潮文庫)陽だまりの彼女 (新潮文庫)
恥ずかしながら、私、実はラブストーリーが大好きです。ハートウォーミングなものであればなおさらです。この小説を読み始めるや否や本を手放すことができなくなりました。仕事の合間を縫ってむさぼるように読みました。この小説が後世に残る名作だとは思いません。映画で言えば「ノッティングヒルの恋人」「ラブソングができるまで」といったところ。(どちらもヒュー・グラントが主演ですが、私が彼に似ているなどと思い上がっているわけではありません) 玄人筋の評価は高くなくても良いではないですか。すてきな物語です。それで十分。
読了日:10月24日 著者:越谷 オサム

 


板谷バカ三代 (角川文庫)板谷バカ三代 (角川文庫)
どんなにバカだろうと、どんなにやっていることがむちゃくちゃだろうと、このバカどもには心の琴線にふれるなにかがある。それはおそらく真心だろう。たとえば著者がバカの真打ちという父ケンちゃんは18歳の時から某自動車会社に定年になるまで勤め42年間無遅刻無欠勤、有給休暇など一度も取得せず、8時半始業のところ6時半には会社に行くようにしていたという。バカといえばバカかもしれない。しかしバカはバカでも愛すべきバカだ。そう、板谷家のバカは忌むべき小賢しさの対局にあるのだ。本書が読者に愛される所以である。
読了日:10月31日 著者:ゲッツ板谷