『プリズンホテル 3 冬』(浅田次郎・著/集英社文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
阿部看護婦長、またの名を“血まみれのマリア”は心に決めた。温泉に行こう。雪に埋もれた山奥の一軒宿がいい…。大都会の野戦病院=救命救急センターをあとに、彼女がめざしたのは―なんと我らが「プリズンホテル」。真冬の温泉宿につどうのは、いずれも事情ありのお客人。天才登山家、患者を安楽死させた医師、リストラ寸前の編集者。命への慈しみに満ちた、癒しの宿に今夜も雪が降りつもる。
「生」と「死」を見つめ、「愛」と「憎しみ」を考える巻となった。「生」と「死」は背中合わせであっても実は同じものではあるまいか。「愛」と「憎しみ」もまた然りである。本書を読んで死に方とは生き方であって、憎しみは愛の一つのかたちなのだと理解した。
「いいか小僧。死んでもいいというのと、死にたいというのは大ちがいだ。最高の男と最低の男のちがいだぞ。一緒くたにするな」という伝説のアルピニスト・武藤嶽男の台詞に背筋が伸びた。
本物のクライマーはいつか必ず山で死ぬことになっている。しかたのないことさ。
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クライマーは困難を目ざすんだ。齢とともに体力は衰える。だが、それに応じたレベルに下りることなどできはしない。もちろん山をやめるわけにもいかない。だから本物は、いつか必ず山で死ぬんだ。
P115より