佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

映画『ペンギン・ハイウェイ』(2018年、日本)

2022/10/27

 映画『ペンギン・ハイウェイ』を観た。ファンタジーアニメ映画で、原作は私が敬愛する森見登美彦氏の同名小説である。過去の日記を振り返ってみると、私がこの小説を読んだのは2013年1月9日のことだ。その四日前には琵琶湖の北、高島市メタセコイア並木をサイクリングしている。折しも雪が積もっており、雪景色美しい並木道を走ったことを今も鮮明に覚えている。なかなか良い始まり方をした年であることよ。

 まずは配給元の紹介文を引く。

作品概要
少し不思議で、一生忘れない、あの夏が始まる。
小学四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録している男の子。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、「きっと将来は偉い人間になるだろう」と自分でも思っている。そんなアオヤマ君にとって、何より興味深いのは、通っている歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でどこかミステリアス。アオヤマ君は、日々、お姉さんをめぐる研究も真面目に続けていた。夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。街の人たちが騒然とする中、海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか・・・。ペンギンヘの謎を解くべく【ペンギン・ハイウェイ】の研究をはじめたアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」一方、アオヤマ君と研究仲間のウチダ君は、クラスメイトの ハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体の存在を教えられる。ガキ大将のスズキ君たちに邪魔をされながらも、ペンギンと同時にその球体“海”の研究も進めていくアオヤマ君たち。やがてアオヤマ君は、“海”とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。
■監督:石田祐康■脚本:上田誠ヨーロッパ企画)■キャラクターデザイン・演出:新井陽次郎■演出:亀井幹太■監督助手:渡辺葉■作画監督:永江彰浩/加藤ふみ/石舘波子/山下祐/藤崎賢二■美術監督:竹田悠介/益城貴昌■色彩設計広瀬いづみCGI監督:石井規仁■撮影監督:町田啓■音響監督:木村絵理子■音楽:阿部海太郎■主題歌:「Good Night」宇多田ヒカルEPICレコードジャパン)■制作:スタジオコロリド■製作:「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会■配給:東宝映像事業部
森見登美彦ペンギン・ハイウェイ』(角川文庫刊)
(C)2018 森見登美彦KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 

 

 

 小説を映画化したものを観て、小説より良かったと思えるものは滅多にない。この映画についても小説を超えて良いとまでは言わない。しかし良かった。かなり良かった。より劇的に描かれ、その意味で小説を超えるワクワク感もあった。主人公のアオヤマ君、そしてアオヤマ君が恋心と言えぬほどの初々しい思いをよせる歯科医院のお姉さんがとてもとても魅力いっぱいに描かれている。何度でも見直したいほどの出来である。

  またこの小説を読みたくなった。9年前にこの小説を読んだときのレビューを抜粋して引いておく。このレビューは映画にも当てはまるだろう。

 主人公の少年は自立心と向上心と克己心に溢れている。少年は世界の果てやら相対性理論やら生命の起源やらについて考えるのに忙しい。少年は怒らない。怒りそうになるとおっぱいのことを考えるのだ。おっぱいケーキを食べるのも有効な手段のひとつだ。心を平和に保つ術を心得ている。

 また、少年は毎日ノートをたくさん書く。おそらく日本で一番ノートを書く小学四年生である。少年はその習慣ゆえずんずんえらくなって頭角を現しつつある。少年はいつかえらくなりすぎて、たくさんの女の人から結婚してほしいといわれるかもしれない。でもそれにこたえるわけにはいかない。もう相手を決めてしまっているからだ。

 私はこの少年は一八歳になれは京都大学に合格しそうな気がしている。そして、腐れ大学生として、一見無意味な研究に没頭するのだ。しかし、今日の自分は必ず昨日の自分よりえらくなるという心がけゆえにずんずん頭角を現すだろう。そしていつかペンギン・ハイウェイを辿って世界の果てに行き着くことができるだろう。それはお姉さんにつながる道だ。たから泣くな少年。ぐんない。