『好きになった人』(梯久美子・著/ちくま文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
時代に鮮烈な足跡を残した人々を、深い取材のもとに描いてきた著者が、忘れられない人々について綴る。石内都、石垣りん、森崎和江などの表現者。島尾ミホ、吉本隆明、森瑶子など直接素顔に接した人たち。管野スガや栗林忠道など激動の時代の証言者たち。個々の人生を通して社会を見つめるノンフィクション作家によるエッセイ。文庫化にあたり加計呂麻島紀行を収録。
四金会(月に一度、第4金曜日に集まる有志による読書会)の今月の課題書。
梯さんの好きになった人は栗林忠道、島尾ミホ、石垣りん、森崎和江、管野スガ、東君平、森瑶子、吉本隆明、黒岩比佐子、児玉清、そして老いた父。この老いた父というのが泣かせる。本書はもともとエッセイ集『猫を抱いた父』が文庫化されたものである。「猫を抱いた父」というエッセイはたまたま老いた父とトルコ旅行に出かけることになり、子供の頃からこれまでほとんどコミュニケーションをとってこなかった父と過ごし、これまで知らずにいた父の姿を見ることで自分の中にある父のイメージがだんだん変わっていく様が書かれている。だんだん父親を一人の男として尊敬していく様子がうかがえる秀作である。
メンバーのMさんから、梯さんの書かれたノンフィクション『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』を借りた。こいつは重そうだ。秋の夜長にコツコツと読まねばなるまいな。