2022/01/30
『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』(大崎梢ほか:著/光文社文庫)を読んだ。
まずは出版社の紹介文を引く。
「本屋さん」をモチーフに、短編を一作書いていただけませんか?書店をこよなく愛する作家・大崎梢が、同じくらい書店が好きにちがいない人気作家たちに執筆を依頼。商店街、空港、駅近、雑居ビル。場所は違えど、多種多様な人が集まる書店には、宝石のようなドラマが生まれる。読めば笑えて、泣けて、心がふっと軽くなる、そんな素敵な物語十編。
京都を旅したとき、木屋町通りの居酒屋に向かう途中、京阪三条の古本屋で買った本。旅先にはいつも本を持参しているのだが、ホテルから居酒屋に飲みに出るとき本を部屋に忘れてきたのだ。ホテルに取りに戻っても良かったのだが、たまたま通りがかりに大手の古本屋があったので用を足したのだ。”本屋さんのアンソロジー”とはなんとも魅力的な題ではないか。言い出しっぺ大崎梢氏のファンでもある。執筆陣を見ると坂木司氏、似鳥鷄氏、誉田哲也氏と好きな作家さんも名を連ねている。短編というのも読みやすそうだと即決であった。
収められた10編のタイトルと作家名を整理しておく。
- 「本と謎の日々」 有栖川有栖
- 「国会図書館のボルト」 坂木司
- 「夫のお弁当箱に石をつめた奥さんの話」 門井慶喜
- 「モブ君」 乾ルカ
- 「ロバのサイン会」 吉野万里子
- 「彼女のいたカフェ」 誉田哲也
- 「ショップ to ショップ」 大崎梢
- 「7冊で海を越えられる」 似鳥鷄
- 「なつかしいひと」 宮下奈都
- 「空の上、空の下」 飛鳥井千砂
人生いろいろ、作家さんもいろいろ。それぞれ違ったテイストがあって愉しい。テイストは違えど書店を愛する気持ちの強さは共通しているらしいのがなんだかうれしく、おもわず顔がほころんでしまう。
私のベスト3は「夫のお弁当箱に石をつめた奥さんの話」(門井慶喜)、「7冊で海を越えられる」(似鳥鷄)、「なつかしいひと」(宮下奈都)。門井慶喜氏と宮下奈都氏は初読みである。これはお二人の作品を読まねばならぬと門井氏は直木賞受賞作である『銀河鉄道の父』を、宮下氏はデビュー作の『静かな雨』とエッセイ『神さまたちの遊ぶ庭』を発注した。またまた読むべき本が増えてしまった。困った、困った、と言いながら、なぜか顔がほころんでしまう。
ただ、還暦を過ぎたジジイがにまにましていると痴呆が始まったか色ボケにしか見えぬ。困った、困った。これはほんとうに困ったことだ。