佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『居酒屋ぼったくり』(秋川滝美・著/アルファポリス文庫)

『居酒屋ぼったくり』(秋川滝美・著/アルファポリス文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。名に似合わずお得なその店には、旨い酒と美味しい料理、そして今時珍しい義理人情がある―全国の銘酒情報、簡単なつまみの作り方も満載。旨いものと人々のふれあいを描いた短編連作小説、待望の文庫化!

 

居酒屋ぼったくり〈1〉 (アルファポリス文庫)

居酒屋ぼったくり〈1〉 (アルファポリス文庫)

 

 

 文学小説としての完成度や味わいはともかく、七編の短編それぞれに美味しそうな酒肴と酒が出てきて、左党にはなかなか魅力的だ。第一話にでてくる「卵黄の味噌漬け」など私も作ったことがあるが、出てくる酒肴はどれも簡単にできて、しかも美味しいであろうものばかり。酒は敢えてプレミアムがつくような銘柄を避けて紹介している。作者の秋川さんはなかなかの左党とみた。

 出てきた酒肴(または〆ごはん)と酒を下記に整理しておく。

 

<第一話・暖簾の向こう側>

酒肴または〆・・・「おでん」「卵黄の味噌漬け」「かき菜のおひたし」「菜飯」

酒・・・「諏訪泉 特別純米

 

<第二話・想い出につける付箋(タグ)>

酒肴または〆・・・「人参の葉の炒めもの」「卵の煮付け」「甘納豆を使った赤飯」「こづゆ」「芋煮」「鶏の煮こごり」「鶏の唐揚げ 大根おろしと刻んだ梅干しのせ」「茸雑炊」

酒・・・「吉乃川 厳選辛口」

 

<第三話・丑の日の孝行娘>

酒肴または〆・・・「ミョウガの梅酢づけ」「小鯵のあつあつ南蛮漬け」「福島の桃」「鰻と大葉のちらし寿司」

酒・・・「ヘレス(ドイツビール)」

 

<第四話・汗かき職人の夏>

酒肴または〆・・・「なすの田楽」「豚肉味噌巻き」「豆腐の揚げっぱなし」「手羽先スペシャル風」「紫蘇のふりかけとおかかのおにぎり」「キュウリ一本漬け」

酒・・・「ラドラー(ビールをレモンソーダで割ったもの)」「朝日山 百寿盃」「北の錦 北斗随想」

 

<第五話・拾った子猫>

酒肴または〆・・・「鮎の塩焼き」「冷やし茶漬け」「カマンベール生ハム巻き」「トマトと生ハムのカッペリーニ

酒・・・「上善如水」「梅錦 風神」「Night Musicドイツワイン)」

 

<第六話・夏休みの過ごし方>

酒肴または〆・・・「枝豆」「おつまみ素麺」「素麺チヂミ」

酒・・・「ヒューガルデン・ホワイトベルギービール)」

 

<第七話・ゴーヤの苦み>

酒肴または〆・・・「ゴーヤチャンプルー」「ゴーヤのおひたし」「めはり寿司

酒・・・おそらく「サントリービール プレミアムモルツ

 

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『長澤蘆雪-躍動する筆墨-』(藤岡 奈緒美・著/藤間寛・監修/山陰中央新報社)

長澤蘆雪-躍動する筆墨-』(藤岡 奈緒美・著/藤間寛・監修/山陰中央新報社)を読みました。

2018/05/26 レンタサイクルで松江市内をポタリング中に松江城東隣「松江歴史館」にさしかかり、企画展『長澤蘆雪_躍動する墨筆』をやっていることを知る。ここで西光寺の「龍図襖絵」「虎図」だけでなく、但馬・大乗寺の「群猿図襖絵」、和歌山・草堂寺「虎図襖絵」に出会えるとは思わなかった。

 

円山応挙に師事し、江戸時代後期に京都で活躍した長沢蘆雪(1754-1799)。龍や虎、猿、人物などを生き生きと描く作風が、近年とみに人気を博しています。円山応挙に師事し、江戸時代後期に京都で活躍した長沢蘆雪(1754-1799)。龍や虎、猿、人物などを生き生きと描く作風が、近年とみに人気を博しています。松江市上大野町の西光寺には蘆雪筆の「龍図襖絵」(松江市指定文化財)が伝わっており、2017年度に作品の保存修理がなされました。本誌は、保存修理をを記念して県内の優品や和歌山県・草堂寺や兵庫県大乗寺が所蔵する作品を集めて松江市立松江歴史館が企画した展覧会「長沢蘆雪-躍動する筆墨-」(2018年4月27日~6月10日)の図録です。見る者の意表を突き、生き生きとしたエネルギーに満ちあふれた筆致や構図など、蘆雪の魅力を伝えます。 著者について 松江歴史館学芸専門監

 

長沢蘆雪 -躍動する筆墨-

長沢蘆雪 -躍動する筆墨-

 

 

 

 大胆というか、あまり細かく突きつめないおおらかなタッチが好きだ。蘆雪の描く虎は側にいても襲ってこない気がする。群猿図の猿の表情に遊び心を感じる。これらは蘆雪の人柄があらわれたものなのであろうか。

 

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『エヴァンゲリオン展』(図録)

 先日、松山に行ったときに島根県立美術館で買い求めた『エヴァンゲリオン展』(図録)。ページをめくり手書き鉛筆による繊細な手仕事を一枚一枚観ていくのは楽しい。生の画だけが持つ原初のスピリッツとでもいえば良いのだろうか・・・ビンビン伝わってきます。

 展示室に入ってほどないところにあった「新世紀エヴァンゲリオン」オープニング・セル画、YouTubeで視ると1:30のうち1:20のほんの一瞬写るレイ。未来を夢見るようなまなざし。可愛くもあるが、誇り高くもある表情。口元は強い意志をもって硬くむずばれている。なかなか良いではないか。文字通り一目惚れである。

 

www.youtube.com

『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎・著/幻冬舎新書)

『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎・著/幻冬舎新書)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 

もし、あなたがよりよく生きたいと望むなら、「世の中には知らないことが無数にある」と自覚することだ。すると知的好奇心が芽生え、人生は俄然、面白くなる。自分の無知に気づくには、本がうってつけだ。ただし、読み方にはコツがある。「これは重要だ」と思った箇所は、線を引くなり付箋を貼るなりして、最後にノートに書き写す。ここまで実践して、はじめて本が自分の血肉となる。伊藤忠商事前会長、元中国大使でビジネス界きっての読書家が、本の選び方、読み方、活かし方、楽しみ方を縦横無尽に語り尽くす。

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

 

 はっきり言ってタイトル買いです。なんとうらやましいヤツだ、いったいどんなヤツなのだと興味津々で買った。ウィキペディアによると著者・丹羽宇一郎氏は伊藤忠商事会長・社長、日本郵政株式会社取締役、特定非営利活動法人国際連合世界食糧計画WFP協会会長などを歴任の後、2010年(平成22年)6月から2012年(平成24年)12月まで中華人民共和国駐箚特命全権大使を務め、同月から早稲田大学特命教授。日中友好協会会長。グローバルビジネス学会会長、というすごいお方。そういえば御名前は聞いたことがある。

 読書が必要かどうか、読書をすればどのようなメリットがあるのか、あるいはどのような能力が備わるのか、議論はいろいろあるところ。しかしはっきり言ってそんなことはどうでも良い。本好きは、それも紙魚やら書痴といわれるほどの本読みはそんな目先の実利を目的に読んでいるのではない。本が本当に好きで読んでいるのだ。ほとんど病気なのだ。

 おそらく著者・丹羽氏とてそれは同じだろう。とはいえ、本書で丹羽氏がおっしゃっていること、読書することによるプラスの応報はまったく正しい。異議ございません。

 

 

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草間彌生『永遠の南瓜展 PUNPKIN FOREVER』(フォーエバー現代美術館 祇園・京都)

2018/05/29 京都

 知人と京都祇園「天ぷら八坂圓堂」でランチ。

 食後、建仁寺を抜けて行くと草間彌生さんの「南瓜」が見えた。場所は祇園甲部歌舞練場内・八坂俱楽部である。なんだなんだと敷地内に分け入ってみると八坂俱楽部が「フォーエバー現代美術館 祇園・京都」なるものになっており、そこで草間彌生『永遠の南瓜展 PUNPKIN FOREVER』が開催されているではないか。そうか、そういえば噂に聞いていたな。先日来、二度も松本市を訪れながら『草間彌生展』を見逃していたのだ。ここで会ったが百年目、これを見逃す手はないと入館した。

 伝統ある建物内で観る草間彌生さんの作品は強烈な印象をもって迫ってくる。定番の「南瓜」はもちろんのこと、草間さんが幼い頃から描くのが好きだったという「花」も良い。そして何よりも嬉しかったのは「七色の富士」を観ることが出来たこと。草間ドットに包まれた富士山を観るのは初めてでした。草間さんの描いた絵が浮世絵版画となっています。富士山にも草間ドットは健在です。きっと草間ドットは彫り師泣かせであっただろうと想像すると笑ってしまいました。

 

 写真はNGですが、2点だけは許されている。

「私の魂を乗せてゆくボート」

「宇宙にとどけ、水玉かぼちゃ」

 ちなみに我が家にある草間彌生は2点。「ダンスかぼちゃ」は我が家の柱、あるいは壁、窓を時々移動しています。(笑)

『闇の歯車』(藤沢周平・著/文春文庫)

『闇の歯車』(藤沢周平・著/文春文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

江戸市井の人たちの数奇な人生を描いたサスペンス時代長篇。藤沢周平ストーリーテラーとしての力量が発揮された傑作。

深川にある赤ちょうちんの飲み屋「おかめ」の常連である佐之助(博打にはまり賭場で人を刺し、いまは恐喝働きの生活をおくる)、清十郎(不倫関係から駆け落ちした病身の妻と、人目を忍んで暮らす浪人)、弥十(若い頃人を刺したが、いまは楽隠居暮らし)、仙太郎(賭場に借りがあるうえに年上の女おきぬと別れたい、若者)。この四人の一人に、愛想のいい商家の旦那ふうの伊兵衛が、大金強盗の押し込みを働く企てをもちかける。

たがいの身の上を知らない同士の四人が、百両の金にひかれて、闇の方向へ、その歯車をみずから回す決断をくだすーー。

 

闇の歯車 (文春文庫)

闇の歯車 (文春文庫)

 

 

 おぉ! これは・・・

 ハードボイルドではないか! 書き出しの一行にしびれた。「暑い夜だった。そして夜は始まったばかりだった」、まるでチャンドラー張りではないか。いや、山下達郎「土曜の夜は始まったばかり♪ まるで僕たちの愛のようなざわめき♪」か? いやいや、ふざけている場合では無い。これはウィリアム・アイリッシュの『幻の女』の書き出しを彷彿とさせる。

――夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

 

 The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.

 

 五人の悪党が登場する。一緒に押し込みをはたらく。藤沢氏はそのそれぞれに別々の末路を用意する。まるで素材に合わせて料理するかのように。非情で容赦ない末路もあれば、しんみりとするもの、心が温かくなり未来を予感させるもの。なかなかの名料理人である。

 

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「旅人」(たびと)

 松江からの帰り、高速バスで岡山に到着。往路は「やくも」を使ったが、復路は高速バスを試してみた。案外早くて便利だ。

 岡山からすぐに新幹線に乗ってもいいのだが、せっかくなので小一時間居酒屋探索をしようと岡山駅前商店街をぶらついた。

 こういうときの私の鼻は良く利く。見つけました。「旅人」(たびと)というおでんの店。

 カウンターだけの落ち着いた雰囲気の店。店内にジャズが流れており、モニターにはチャップリン無声映画。本当におでん屋なのかと疑問に思ったが、ええいままよとカウンター中央付近に腰掛けた。客は私一人だ。

 まずは飲み物。メニューに目を通すとなかなかシブイ銘柄が並んでいる。「勝駒」があるとは、しかも純米吟醸。今時なかなか手に入らない。お主なかなかやるな、という感じだ。即時決定「勝駒」1合。肴に注文したのは大根、貝(全国どこにでもあるらしいが、なにやら変わった名前であった。忘れた)、茶碗蒸し、馬のスジ。どれも出汁の味が利いており美味であった。

 出てくるおでんに舌鼓を打ちながら、酒を次々と注文してしまった。「秋鹿 生酛 もへじラベル」これまた希少な酒ではないか。続いて「白龍 純米吟醸 游」。こちらは「川中島」にしようかどうか迷った。どちらも女性杜氏。24歳の杜氏と聞いて「白龍」を選んだ。若い女性杜氏がどれほどの酒を造るのか飲んでみたいと思ったのだ。なるほどスッキリと辛口、きれいな酒だ。まだまだ「池月 純米 みなもにうかぶ月 ふな掛け あらばしり」。微かな華やかさを感じさせながらも、決して出しゃばらず穏やかな酒。やさしい。癒やされる。

 新幹線待ちで、これほどの酒揃えの店に出会えるとは・・・やはり私はついている。