『マイ・ボディガード』(Man on Fire)を観た。監督はトニー・スコット。A・J・クィネルの『燃える男』が原作である。
原作は数年前に読んでいる。原作を読んでから映画を観るとがっかりさせられることが多いが、この映画は楽しめた。映画の前半でデンゼル・ワシントン扮する主人公ジョン・クリーシーとダコダ・ファニング扮する9歳の娘ピタとの心の交流がしみじみと伝わってくる。後半でのクリーシーの復讐劇も見物だ。
ジョン・クリーシーは、生きる希望を失っていた。16年間、米軍で対テロ活動という名の暗殺の明け暮れた彼は、人を愛することが出来なくなり、何のために生きているのかさえ、判らなくなってしまったのだった。たった9歳の少女ピタが、そんな彼の閉ざした心に隠された悲しみと優しさをひと目で見抜き、一点の曇りもない信頼を寄せる。誘拐が多発しているメキシコシティで、クリーシーはピタの”ボディガード”として、彼女の父親に雇われたのだ。クリーシーがピタとの交流の中で生きる希望を取り戻し、まさに彼女から”新しい命”をもらったとき、ピタが誘拐されてしまう。自分の命よりも大切なものを奪われたクリーシーは復讐を誓う。しかし、それは単純な誘拐事件などではなかった。巨大な犯罪組織と予想もしなかった真相がクリーシーを待ち受けていた。
良くできた映画だ。苦言を呈するとすれば、ハードボイルド小説の映像化らしくカットバックを多用しながらカッコイイ映像を意識しているのだが、それが少し鼻につく。もう少しどっしりとクリーシーの存在感を描いても良かったのではないか。
小説のクリーシー・シリーズは「燃える男」、「パーフェクト・キル」、「ブルー・リング」、「ブラック・ホーン」、「地獄からのメッセージ」と続く。いずれも新潮文庫から発刊されている。シリーズ第一作「燃える男」(この映画の原作です)を一度読んでしまったら、残り4作を読まずにはいられないはずです。是非、ご一読を。
♪本日の一曲♪