佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

カイシャデイズ

明日では遅過ぎる。

今日、いまからあたしは本気だ。

                 (本書P361 シューカツデイズより)

 

 

『カイシャデイズ』(山本幸久/著・文春文庫)を読みました。

 

裏表紙の紹介文を引きます。


わがままで強面(こわもて)だが人望厚い営業チーフ、いつも作業着姿の昭和風二枚目施工監理部員、掟やぶりのヒラメキ型デザイナー。彼ら“魔のトライアングル”3人組と内装会社の同僚達が、莫迦で無茶で情熱一杯に働く姿を描いた、胸を熱くさせる傑作ワーキングストーリー。文庫書き下ろし短篇「シューカツデイズ」を収録。 解説・川端裕人


 

 山本幸久氏は『ある日アヒルバス』、『凸凹デイズ』を読んだのでこれが三作目。これまでの二作もそうであったが、本作もほのぼの系お仕事小説である。これら三作に共通しているのはお仕事系小説だということだけではない。どの作品も登場人物のキャラが魅力的で、愛すべき奴らだということ。登場人物は格別に立派な人間ではない。普通である。人間的に欠陥があるし、悩み多きダメ男あるいはダメ子だ。会社のルールは逸脱するし、人に人望があれは嫉妬もする。社長にはカリスマ性など欠片もないし、社員は朝方まで飲んで会社の机の下で寝ている始末。しかも社員はフーゾク好きだ。でも彼らは皆、良い人だし、程度や質に差こそあるが仕事に一生懸命だ。そんな彼らが繋がれば、何かを成し遂げることが出来る。決して大それたことは出来ないけれど。

 山本幸久氏の小説を読むと、いつも心がほっこりして、楽しい気分になっている自分に気づく。なんだかとても幸せな気分なのだ。そして、「世の中、すてたもんじゃないな」と思う。それは山本氏の描き出すキャラクターが人生を投げずに真っ当に生きている愛すべき人々だからだろう。そこには山本氏が登場人物を視る優しい視線がある。山本氏が登場人物の一人ひとりを心から愛していることがわかる。読者が小説世界に入り、登場人物にシンパシーを感じ同化して行くにつれ、山本氏の温かいまなざしを感じることが出来るのだ。日曜日の夜に読むと大変よろしい。早く会社に行きたくなります。(笑)