佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

宵山万華鏡

 かつて、彼はこう語ったことがある。

「俺はたいへんワガママだが、己のワガママがもたらす苦しみに耐える男だ。己の行為の報いは己で引き受ける―――ただし、文句だけは人一倍言わせてもらう」

                         (本書P88~P89より)

 

宵山万華鏡』(森見登美彦・著/集英社文庫)を読みました。今宵は宵山。今日ほどこの本を読むに相応しい日はないだろう。

 

宵山万華鏡 (集英社文庫)

宵山万華鏡 (集英社文庫)

 

 

 

 

まずは裏表紙の紹介文を引きましょう。


 

一風変わった友人と祇園祭に出かけた「俺」は“宵山法度違反”を犯し、屈強な男たちに捕らわれてしまう。次々と現れる異形の者たちが崇める「宵山様」とは?(「宵山金魚」)目が覚めると、また宵山の朝。男はこの繰り返しから抜け出せるのか?(「宵山迷路」)祇園祭宵山の一日を舞台に不思議な事件が交錯する。幻想と現実が入り乱れる森見ワールドの真骨頂、万華鏡のように多彩な連作短篇集。


 

 

 ブログによると登美彦氏は子どもの頃、裏山の和尚さんとケンカをして、「実益のないことしか語ることができない」呪いをかけられたそうな。

http://d.hatena.ne.jp/Tomio/20120626#p1

 

 翻って私はどうか。「阿弥陀如来を頼みまいらせて念仏すべきものなり。あなかしこ、あなかしこ」というありがたい御教えをことごとく無視してきた報いか、小説などという実益の欠片もないものを果てしなく読み続けるという毎日を送っている。しかもあろうことか登美彦氏の文章がことのほかお気に入りである。阿呆としか言いようがない。それにつけても、この無益な小説を読む喜びは果たして無益なことなのだろうか。ひょっとしたら有益なことではなかろうかとも思う。

 本書に於いて登美彦氏はそのお得意とする大学生の阿呆な生態を描きつつ、京の祭りに潜んでいそうなもののけのごとき不気味さもあわせて書き込んでいる。森見フリークにとってこれほどうれしいことはない。