佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

紫紺のつばめ

「だからな、伊三次。この店の金は、わしが作ったものでありながら、わしの思いのままにならぬ。どういう理屈だ? 金を持つと、その持った金が今度はわしを縛る。どこまで行っても金はわしの自由にはならぬ・・・・・・金は喰うのに困らぬほどにあれば、それでいいのだ」

「ですが、その金のためにわたしは女に背かれることにもなりやした」

                             (本書P123「菜の花の戦ぐ岸辺」より)

 

『紫紺のつばめ ~髪結い伊三次捕物余話~』(宇江佐真理・著/文春文庫)を読みました。

 

 

ますは出版社の紹介文を引きます。


 

材木商伊勢屋忠兵衛からの度重なる申し出に心揺れる、深川芸者のお文。一方、本業の髪結いの傍ら同心の小者を務める伊三次は、頻発する幼女殺しに忙殺され、二人の心の隙間は広がってゆく……。別れ、裏切り、友の死、そして仇討ち。世の中の道理では割り切れない人の痛みを描く人気シリーズ、波瀾の第二弾。解説・中村橋之助

 


 

 髪結い伊三次シリーズ第一弾『幻の声』を読んでから久しい。すぐにも続きを読みたかったがそこをグッと我慢して他の著者の本を読んでいた。読みたいのを堪えに堪えたうえで一気に読む。これがたまりません。そうした変態的楽しみ方もまたシリーズものならではのものです。

 さて、第二弾の本書です。伊三次とお文の別れと再出発。いなみの仇討ち。おみつが拐かされたりと波瀾の展開にはらはらさせられどおしでした。でも読み終えた後、ほっこり胸が温かい。これぞ宇江佐真理さんです。期待を裏切りません。さすがです。

 ちなみに私、いなみに心惹かれています。まっすぐで気丈なところが良い。