佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

一月の読書メーター

一月はアタリ月でした。良い小説、コミックに出会うことができました。森見登美彦氏の『ペンギン・ハイウェイ』、山本幸久氏の『幸福ロケット』は心温まる小説でした。重松清氏の『とんび』ではぼろぼろに泣きました。初めて読んだ森奈津子氏。『西城秀樹のおかげです』にはぶっ飛びました。すごい才能です。中に収められた短編「エロチカ79」を読んでからは「後生ですから・・・・」という言葉を聞くと劣情をもよおしてしまう体質に変えられてしまいました。どうしてくれるんだ、森さん。森さんといえば森薫氏の『乙嫁語り』の最新刊(5)が出ました。待ちに待っていました。やはりこの人の画はすばらしい。シリーズものでは宇江佐真理氏の髪結い伊三次シリーズ2『紫紺のつばめ』、近藤史恵氏のロードレースもの第二弾『エデン』が読めて幸せ。小路幸也氏の探偵ザンティピー・シリーズも読み始めました。現在、絶版となっている『じゃりン子チエ』(全67巻)も手に入れ再読中。あぁ、本の海はあまりにも広く深い。そして、人の一生はあまりにも短い。もっと時間を!

 

2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4910ページ
ナイス数:3944ナイス

暴走家族は回り続ける (講談社文庫)暴走家族は回り続ける (講談社文庫)感想
愛を、そして絆を失ってしまった家族の道行きと再生の物語。こうまとめてしまえば愛と感動の物語かと思われるかもしれないが、それは大いなる勘違いです。いささか下品です。いや、そうとう下品です。いやいや、極めて下品です。読んだ感想など語るに値しません。一つだけ言えるのは「勢いだけは、パねぇ」ということ。でもけっして嫌いじゃないですよ。そうでなければ悪夢シリーズを通読しません。そうです。私は木下半太氏のファンです。
読了日:1月2日 著者:木下 半太

 

 

 


ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)感想

よもやこの少年の名は守田・おっぱいに目のない男・一郎君ではあるまいな?、と思ったが違っていた。少年の名はアオヤマ君であった。少年は自立心と向上心と克己心に溢れている。少年は世界の果てやら相対性理論やら生命の起源やらについて考えるのに忙しい。少年は怒らない。怒りそうになるとおっぱいのことを考えるのだ。おっぱいケーキを食べるのも有効な手段のひとつだ。心を平和に保つ術を心得ている。いつか少年はペンギン・ハイウェイを辿って世界の果てに行き着くことができるだろう。それはお姉さんにつながる道だ。泣くな少年。ぐんない。
読了日:1月6日 著者:森見 登美彦

 

 


和菓子のアン (光文社文庫)和菓子のアン (光文社文庫)感想
デパ地下お仕事系日常のミステリですね。幸せになりたいと心から願うあなた、この小説を読みなさい。然る後に和菓子屋に行くべし。あなたが知らなかった世界が其処にあります。その世界を知ることなく生きた?年間の人生はいったい何だったんだーと地団駄を踏むことでしょう。今日は仕事帰りにデパ地下の源吉兆庵に行き「紅花りんご」と「粋甘粛」を買いましたよ。その後、酒売り場でお姉さんに「加茂鶴の新酒が入っていますよ」と声をかけられたが素通りしてしまった。我ながらびっくりしている。信じられん・・・・。
読了日:1月8日 著者:坂木 司

 

 


とんび (角川文庫)とんび (角川文庫)感想
「幸せすぎると、悲しゅうなるんよ。なんでじゃろうなぁ」という気持、わかります。だって、その幸せはほんとうに大切なものだから。失いたくないものだから。この小説は反則です。涙を堪えようにも、そうできないから。読み始めたら最後、目頭はぐじゅぐじゅです。ヤスさん、あなたに教えてもらいました。たとえ「理」のスジは通っていても、「情」のスジが通っていなければいけないのだと。そうでなければ、悲しゅうなるほど幸せを希求する気持に申し訳が立たないのだと。ヤスさん、私は泣きましたよ。笑いたいから泣きましたよ。
読了日:1月12日 著者:重松 清

 

 



幸福ロケット(ポプラ文庫)
幸福ロケット(ポプラ文庫)感想
素敵なラブ・ストーリーでした。本作にも山本幸久氏の登場人物に注ぐ温かいまなざしは健在です。山本氏の小説に悪人はいません。そりゃあ、ちょっとイヤな奴、いささかヘンな奴はいます。天国の物語じゃないのですから。でもそんな人物も本当はイイやつなんです。ちょっとした怒りやジェラシーから相手を傷つけるような行動をとったり、言葉を発してしまう。でもそれはその時のいきさつからそうなったわけで、場面が違えばまた別の顔が見えてくるはず。山本氏の小説を読んでいつも思うのは「世の中、捨てたもんじゃない」だ。私はそう信じている。
読了日:1月14日 著者:山本幸久
乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)感想
初版初刷発刊日は10日後の1月25日。amazonから昨日届いたばかり。なのに読書メーター登録者数938。みんな首を長くして待っていたのだな。ライラとレイリ、双子の結婚式。スミスさんの旅はつづく。カルルクとアミルの仲睦ましい様子が微笑ましい。相変わらず森薫さんの画は微に入り細にわたる。
読了日:1月16日 著者:森 薫

 

 

 

 

 


エデン (新潮文庫)エデン (新潮文庫)感想
サクリファイス。ツールにおいてそれはチームのエースを勝たせるために自己を犠牲にすること。しかしそれは与え続ける者と奪い続ける者といった一方的な関係ではない。なぜならエースはチームメイトの犠牲に見合うだけの結果を残す責任を負うからだ。チームの思いを一身に受け止め、チームの栄光を勝ち取る責任を引き受けるのだ。ある選手はそれを”呪い”と表現した。日本人としてツール・ド・フランスの舞台に立つチカにも”呪い”はかかっている。それも超弩級の”呪い”が・・・・・。チカがその”呪い”にどう応えるか、続きが読みたい。
読了日:1月17日 著者:近藤 史恵

 

 


じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (1) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (1) (アクション・コミックス)感想
ヨシ江さんの事を好きすぎて身の置き所のないテツ。チエちゃんが好きで意地悪をいうマサル。テツに何度だまされても、今度こそはひょっとしたらと期待してしまうおジイはん。どうしようもない息子とあきらめながらも正面からテツに向き合うおバアはん。テツの屈折した心情を子供の頃から知っている花井先生。むちゃくちゃなテツを警察官になった今もつれだというミツル。いつもテツにひどい目に遭わされるのに、テツの側に寄ってくる元・遊興倶楽部の社長、カラメル兄弟。ヨシ江さんもチエちゃんもテツの屈折した心理の理解者だ。この世界は温かい。
読了日:1月19日 著者:はるき 悦巳

 


ツナグ (新潮文庫)ツナグ (新潮文庫)感想
使者(ツナグ)という役割というか能力を持つ主人公という設定になかなか素直に入り込めなかった。あり得ないだろうという心理障壁です。しかしその嫌いにもかかわらず感動しました。よい小説でした。相変わらず辻村氏は人の心のひだを描くのが上手い。ひがみ、嫉妬、エゴイスティックな心など、人はしばしばそうありたくない自分になってしまう。辻村氏は人のそうした姿を見つめつつも、それでも人は捨てたものじゃないと言ってくれる。読み終えた後に温かいものが残る、そんな物語を紡いでくれる作家です。「長男の心得」と「待ち人の心得」に涙。
読了日:1月20日 著者:辻村 深月

 

 


じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (2) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (2) (アクション・コミックス)感想
年明けに読んだ『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦:著)のアオヤマ少年は日本で一番ノートを書く少年であった。今回、チエちゃんは「母の帰還の巻」で日本一寝る時間の少ない少女となった。あぁ、じゃりチエの第2巻はアカン。何回読んでも泣けてくる。「同居予行演習の巻」で京阪電車の中で歌を歌い続けるチエちゃん、コンクールで金賞に選ばれた表彰式で「ウチのお父はん」と題した作文を読むチエちゃんに涙ボロボロ。私はコミックでボロボロに泣いてしまう日本一アホな老年一歩前の男だ。泣くな少年、泣くなチエちゃん。ぐんない。
読了日:1月20日 著者:はるき 悦巳

 


山田太郎十番勝負 (角川文庫)山田太郎十番勝負 (角川文庫)感想
カフカをしのぐ不条理。(笑)相撲取り、権兵衛タヌキ、武者人形ロボット、サンタクロース、透明人間、ミイラ男、パンパン、星飛雄馬武蔵坊弁慶との真剣(?)勝負。くだらないがつまらなくはない。軽薄だが浅はかではない。あほらしいがイヤではない。愚にもつかないが読んでしまう。この本をお父さんの本棚から取り出して塾通いの電車の中で読んだ香な子ちゃん(山本幸久:著、幸福ロケットの主人公)がいとおしい。ちょっと、エッチなところはどう読んだのだろう? 幸せ系額のシワが取れる小説でした。くだらないけど・・・・・好きです。 
読了日:1月22日 著者:横田 順彌

 

 


洟をたらした神 (文春文庫 (341‐1))洟をたらした神 (文春文庫 (341‐1))感想
「序」として詩人の串田孫一氏が文章を寄せていらっしゃる。吉野せい氏の文章を「一度ですぱっと木を割ったような、狂いのない切れ味」と評された。しかし、私にこの文章は合わない。最初に収められた短編『春』の書き出しはこれだ。「春ときくだけで、すぐ明るい軽いうす桃色を連想するのは、閉ざされた長い冬の間のくすぶった灰色に飽き飽きして、のどにつまった重い空気をどっと吐き出してほっと目をひらく、すぐに飛び込んで欲しい反射の色です。」 これを読んだ瞬間、あぁ、これはダメだと直感した。社会主義思想のにおいも好みじゃない。
読了日:1月23日 著者:吉野 せい

 

 


西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)感想
妄想とエロスとギャグがハイブリッドに同居するお笑い系耽美小説であった。いかん、新幹線車中で読み耽ってしまったぞ。あぁ、「耽る」とはなんとエロティックな言葉であろう。これはSF小説にカテゴライズしてよいのであろうな。そして心做しか官能小説でもある。いや、可成り官能小説であるぞ。ファンタジーでもあり、ロマンスといえなくもない。それとも風刺ととらえると一見軽薄と思えたものもぐっと深みを増してくるではないか。おそろしい小説だ。まあ、これほど「病んでいる」のだからここはSFとカテゴライズしておきたい。
読了日:1月25日 著者:森 奈津子

 

 


紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
髪結い伊三次シリーズ第一弾『幻の声』を読んでから久しい。すぐにも続きを読みたかったがそこをグッと我慢して他の著者の本を読んでいた。読みたいのを堪えに堪えたうえで一気に読む。これがたまりません。そうした変態的楽しみ方もまたシリーズものならではのものです。さて、第二弾の本書です。伊三次とお文の別れと再出発。いなみの仇討ち。おみつが拐かされたりと波瀾の展開にはらはらさせられどおしでした。でも読み終えた後、ほっこり胸が温かい。これぞ宇江佐真理さんです。期待を裏切りません。さすがです。私、いなみに心惹かれています。
読了日:1月28日 著者:宇江佐 真理

 

 


探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)感想
探偵ものといっても小路幸也氏らしい小説でした。全体をとおして家族とか地縁のあたたかい雰囲気が感じられる小説。ただ、なにかしら物足りないのは謎の真相が思ったほどではないからか? あるいは登場人物に悪人がいないからか? でもそれが小路テイスト。小説世界に一緒にいたいと思うのは私だけではないだろう。シリーズ第二弾に期待。続きを読みます。
読了日:1月30日 著者:小路 幸也