佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

HEARTBEAT

 十年後に会おう、という約束を陳腐だと笑うだろうか。

 笑わなくてもそいつはドラマだねぇ、と少しからかいたくなるかもしれない。今どきそんなセリフを言う奴はいないだろうし、いたとしてもちょっと付き合いたくはないかもしれない。

 でも、その約束をしたのは十年前なんだ。十年前の、高校の卒業式の日だ。

                         (本書P24より)

 

『HEARTBEAT』(小路幸也/著・青心社)を読みました。

 

 

優しさは決して弱さの表れではない。逆に人は優しさの分だけ強くなれるのだ。これが、この小説のテーマなのだと私は思う。そして、この小説を魅力的にしているのは、この小説の底流にある男のセンチメンタリズムとロマンティシズムである。好きだなぁ。この女々しさ。男ってのはハードボイルドを気取りながら、こうした心情(ある種の弱さ)を持つ己に酔いしれる変わった生き物なのだ。本作は小路氏の初期の作品のようですね。氏の熱い鼓動(HEARTBEAT)を聴きながら、至福の一気読みでした。

 

出版社の紹介文を引いておきます。


優等生の委員長と不良少女の淡い恋、すべてはそこから始まった。彼女が自力で人生を立て直すことができたなら、十年後にあるものを渡そう。そして約束の日、三年前から行方不明だという彼女の代わりに、夫を名乗る人物がやってきたが―。ニューヨークから帰ってきた青年と、幽霊騒動に巻き込まれた少年少女、そして最高の「相棒」が織りなす、約束と再会の物語。