佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ふりだしに戻る TIME AND AGAIN』(ジャック・フィニィ:著/角川文庫)

『ふりだしに戻る TIME AND AGAIN』(ジャック・フィニィ:著/角川文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

【上巻】

女ともだちの養父の自殺現場に残された一通の青い手紙。その謎の手紙は90年前、ニューヨークで投函されたものだった。

ぼく、サイモン・モーリーはニューヨーク暮らしにすこしうんざりしはじめていた。そんなある昼下がり、政府の秘密プロジェクトの一員だと名のる男が、ぼくを訪ねてきた。プロジェクトの目論みは、選ばれた現代人を、「過去」のある時代に送り込むことであり、ぼくがその候補にあげられているというのだ。ぼくは青い手紙に秘められた謎を解きたくて「過去」へ旅立つ。

鬼才ジャック・フィニイが描く幻の名作。20年の歳月を超えてふたたび甦る。

 【下巻】

1882年真冬のニューヨーク。焼け焦げた、青い一通の手紙を追って、ぼくはここへやってきた。まだ自由の女神は建っておらず、五番街やブロードウェイは馬車でいっぱいだ。現代では想像もできないこの美しい街で、ぼくは青い手紙の投函主をつきとめた。謎は次第に氷解していった。しかし、失われたニューヨークで得た恋人とともに、大火災と凶悪犯罪のぬれぎぬを逃れ、「現代」に帰ってきたぼくを待っていたものは、悪意に充ちた歴史の罠だった─。
「過去」への限りない愛惜と「現代」への拒絶をこめたファンタジィ・ロマンの大作。

 

ふりだしに戻る〈上〉 (角川文庫)

ふりだしに戻る〈上〉 (角川文庫)

 

 

ふりだしに戻る (下) (角川文庫)

ふりだしに戻る (下) (角川文庫)

 

 

 時空を超えたタイムトラベルロマンスを読むならば、本書は押さえておくべき古典的名作のひとつといえる。上巻は冗長だがここは辛抱して丁寧に読み進めるべきだ。ここでへこたれてはせっかくの名作鑑賞のチャンスを逸することになる。何事も辛抱。ここでの辛抱がめまぐるしい展開を見せる下巻に生きてくるのだから。

 冗長な上巻から一変して下巻は展開が早く一気に読ませる。

 本書のテーマはタイムパラドックス。ロマンスも少し盛り込まれているものの、添え物程度である。タイムトラベルのもたらすであろう想像を絶するほどの成果を知りながらタイムパラドックスの危険性を鑑みて人はその行動を抑制することが出来るのだろうか。人は危険性を認識しながらもそれを試さずにいられない。タイムトラベルの方法を手に入れながら、それを封印してしまうことなの出来ないのだ。世界破滅の危険性を認識しながら原子爆弾を開発してしまうのと同じように。それが人類というものなのだ。

 そしてもう一つ、過去へのタイムトラベル中にそのまま放っておけば好ましくない未来が訪れると思える場面に遭遇したとき、人はそれをそのまま放置すべきなのかどうか。過去の出来事を改変してしまうことは未来に干渉することになる。しかし干渉しなければ好ましくない未来の到来を手をこまねいて見ることになる。いったいどうすべきなのかという葛藤。それが本書の味わいです。

 確かレイ・ブラッドベリの短編に過去へのタイムトラベル中に蝶を踏んで殺してしまって、そのことによって未来が変わってしまったというものがあったな。次はそれを読もうか。