効率的に動けば動くほど、名もない犯罪者が犯した取るに足らない、けれど何か猛烈に引っかかるところがある事件にめぐり会う可能性が少なくなるからだ。ポッカリ時間が空いたから裁判所にでも行くか、と考えるようなことも減っていく。ぼくにとって、それは生活がつまらなくなるに等しいことなのだ。 (本書324P「文庫版あとがき」より)
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(北尾トロ/著・文春文庫)を読み終えました。
裏表紙の紹介文を引きます。
ワイドショーも小説もぶっとぶほどリアルで面白いのがナマの裁判だ。しかもタダで誰でも傍聴できる。殺人、DV、詐欺、強姦…。突っ込みどころ満載の弁明や、外見からは想像できない性癖、傍聴席の女子高生にハッスルする裁判官。「こいつ、絶対やってるよ!」と心の中で叫びつつ足繁く通った傑作裁判傍聴記。
- 作者: 北尾トロ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/07
- メディア: 文庫
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世の中には様々なマニアがいる。鉄道、バス、写真、古本、切手、居酒屋、魚、蝶、路地、坂道、etc.…… 対象が何であれ、それを深く愛してしまい、突き抜けてしまうとそこには深遠な世界がある。北尾氏は『傍聴マニア』である。裁判所には、一度覗いてしまうと止められなくなるむきだしの人間ドラマがある。かくいう私も昨年仕事がらみで大阪高裁で裁判を傍聴した経験があり、裁判所の面白さを垣間見てしまった。今は仕事が忙しく、自分に何の関係もない裁判を傍聴する暇などないが、年老いて仕事を辞めたら裁判所をうろつく予感がする。