ウェルズの日記

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『自転車ツーキニスト』(疋田智・著/光文社知恵の森文庫)

自転車ツーキニスト』(疋田智・著/光文社知恵の森文庫)を読みました。

 

「自転車とともに生活すること。それは人生のスタイルを変え得る可能性すら持っている」(「自転車通勤をはじめた頃」より)。ふとしたきっかけで自転車通勤を始め、自転車にのめり込んでしまった著者が、自転車生活の魅力、自転車への熱い思いを吐露! 快適な自転車通勤に必要なものは? 真の自転車的社会とは? 今すぐ自転車で出かけたくなる一冊!(『自転車通勤で行こう』改題)

 

自転車ツーキニスト (知恵の森文庫)

自転車ツーキニスト (知恵の森文庫)

 

 

 自転車ツーキニスト、私もその一人である。14年ほど前から会社まで片道20㎞弱を自転車で通い始めた。といっても朝夕間違いなく雨が降らないと見込まれる日で、仕事帰りに酒を飲まない日、しかも特段の荷物のない日に限られるのでいつも乗っているとは言いがたい。

 私の場合、自転車に乗るのは健康上の理由が大きい。まずはフィジカルな健康。私は酒をたしなむ。いやたしなむという表現は正確な表現ではない。ほとんど毎日飲むし、量も飲む。その帰結として肥満気味である。お医者さんから脂肪肝になりかけていると警告され、酒を控えるか運動をするかどちらかにしなさいとアドバイスを受けた。私には酒を控えるという選択肢はない。となれば運動をするほかない。続いてメンタルな健康。生活をしていく上で、特に仕事においてストレスがあふれている。何かの周期か陰陰滅滅とした気分になる時期があった。軽い鬱状態だったのだろうと思う。それがどうだ。早起きし、太陽の光を浴びながら一時間ばかりペダルをこぎ続けると不思議と気分がスッキリするのだ。運動とストレス解消のメカニズムといった難しいことは私には判らない。しかし自転車に乗ることが抗うつ剤的効能があることは、私の経験上確実であると断言できる。

 もう一つ、私が自転車に乗る理由は単にそうすることが好きだからだ。さらに私は自転車のフォルムにも偏愛と云って良いほどの気持ちをもっている。その美しさに比べれば、名車といわれる車など屁でもない。ロードバイクの美しさと云ったらどうだ。すべて無駄なものをそぎ落とした機能美。これほど美しいものはこの世になかなか存在しないと思う。それゆえ私は自転車に乗るとき常にコンパクトカメラを持ち歩き、気に入った景色をバックに愛車の写真を撮るという性癖を身につけてしまったのだ。これなど他人からみれば相当おバカな姿だろう。

 自転車で移動するのは貧乏くさいか、あるいはカッコ悪いか? 案外そう思っている人は多い。特に年寄りに多い。人はお金を持つと、あるいは地位が上がると車に乗るものだ、それも高級車に乗るものだという固定観念はけっこう強固だ。別にそれを否定する気はない。そういう考え方もあるだろう。しかし私はまっぴらごめんである。たかだか1㎞~2㎞でさえ車で移動する人をみると私は悲しくなる。失礼ながら哀れにすら感じてしまうのだ。簡単なことをわざわざ大仰にしてどうする。もっとシンプルに行動したらどうだ。ハンカチ一枚を洗うのにわざわざ洗濯機を回す必要はない。

 50代も後半の年齢になるとそろそろいろいろなものからの「撤退」を考えなければならない。老い先はそう長くない。知的にも体力的にも衰えてくる。これまでの人生で身につけてしまった贅肉をそぎ落とし、シンプルに美しく生きたいものだ。あと何年生きることになるのかわからないが、「撤退」こそが私に与えられたこれからのテーマだ。少しずつ少しずつ少しずつ人生から撤退する。「悪あがきせずシンプルに生き、美しく死ぬ」これを意識したい。