『情愛の奸 御広敷用人 大奥記録(十)』(上田秀人・著/光文社時代小説文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
八代将軍・吉宗の命を受け、竹姫を継室とする根回しのため京へ上った御広敷用人の水城聡四郎。その帰路、新たな吉宗の命で尾張名古屋に寄った聡四郎は、尾張徳川の「秘事」に触れる。御三家筆頭の運命を決める事実を握った聡四郎に、新たな刺客が放たれた。未曽有の危難を乗り越えるために聡四郎がとった秘策とは―。大人気を誇るシリーズ、待望の第十弾。
『情愛の奸』というサブタイトルがつけられた本巻。「奸」とは悪者、邪なこと、悪賢いこと。いい加減、権力を巡る陰の争いや大奥の邪なことにうんざりしてきた。どうやら上田秀人氏は、このシリーズで大奥の悪辣な所業を殊更にかき立てることで読者の怒りを最高潮に高めることを楽しんでいるらしい。確かに読者は悪に怒れば怒るほど吉宗や聡四郎によってその悪が退けられたとき、ざまあみろとスキッとするのだが。シリーズはまだまだ続きそうだ。まんまと上田氏の術中に陥っている。