佐々陽太朗の日記

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『熾火 勘定吟味役異聞(二)』(上田秀人・著/光文社時代小説文庫)

『熾火 勘定吟味役異聞(二)』(上田秀人・著/光文社時代小説文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

  政敵荻原近江守を追放した新井白石は、その勢いをかって幕政を革新しようと水城聡四郎に新たな命令を下した。聡四郎は、白石の強引な手法に疑問を感じながらも奔走する。そんな時、吉原から疑惑の金が幕府に流れているとの報せが白石の元に入った。罠か、それとも告発か。一万二千両の金はどこに?
 遊郭に巣くう悪漢どもを断つ、聡四郎の一放流の一撃!

 

 

熾火 勘定吟味役異聞(二) (光文社文庫)

熾火 勘定吟味役異聞(二) (光文社文庫)

 

いいですねぇ。何が良いといって、主人公・水城聡四郎が刀を抜いたときの態度が良い。腹が据わっておりまする。すでに葉隠「常住死身」の境地に達しているとみえる。

「毎朝毎夕、改めては死々(しにしに)、常住死身に成りて居る時は、武道に自由を得、一生落度なく家職を仕課(しおお)すべきなり」

 刀を抜き、命のやりとりをするとき、そこに迷いは無い。ただただ己が力の限りを尽くし、相手を打ち負かすことのみ考える。怖れるのはただ自分が大切に想う者を失うことだけというのがいい。

本書において聡四郎の勘定吟味役としての矛先は吉原に向けられる。かねてより『吉原御免状』『死ぬことと見つけたり』を時代小説の最高峰と崇め奉る隆慶一郎ファンの私としては、本書(勘定吟味役異聞シリーズ2)をもってシリーズ全巻を通読することを決定するものなり。