佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

「赤・黒(ルージュ・ノワール) -池袋ウエストゲートパーク外伝-」(石田衣良著・徳間文庫)を読了

 石田衣良が得意とする池袋を舞台とした犯罪小説だ。-池袋ウエストゲートパーク外伝- と銘打っているとおり、WGPシリーズでおなじみの人物が登場する。WGPシリーズの主役「真島誠」は登場しないが、「サル」こと「斉藤富士雄」はこの小説では準主役級の登場人物だ。ストリートギャング、Gボーイズの領袖、キングこと「安藤崇」も登場する。そういう仕掛けがあるので、池袋ウエストゲートパーク・シリーズのファンには堪えられない一冊だ。
 物語はギャンブルで身を持ち崩した主人公の映像ディレクター小峰が池袋のカジノの売上金強奪事件の片棒を担ぐことから始まる。売上金強奪には成功するが、喜びもつかの間。その金を横取りされてしまう。小峰は「サル」とともに、現金を横取りした犯人を追及していくうちに意外な組織が犯人として浮かび上がる。コケにされたまま引き下がるわけにはいかない。犯人組織を絶対に潰してやる。小峰は、相手を潰す方法として自分が身を持ち崩したギャンブルを選ぶ。自分の人生すべてを賭けて相手に立ちむかう。ルーレットの「赤」ルージュと「黒」ノワールに。
 物語の終盤は息もつかせぬ緊迫したギャンブルの場面。スリルがあり十分に楽しめる小説だ。主人公の彼女「香月」もなかなか魅力的だ。
 物語の中で次のような台詞がある。
「わからなくてもいいからきいときなさい。成功というのはある時点でどれだけ勝ったかじゃないの、いつまで勝ったかなのよ。最後まで勝ち続ける人間が勝者で、勝者になるには死ぬまで勝たなきゃいけない。それができないなら、博打からは手を引きなさい」
果たして小峰は人生を賭けた大一番に勝てるのか。