おけいどんさんから教えていただいた映画を観に行きました。
『その木戸を通って』
巨匠・市川崑監督の遺した幻の名作です。
巨匠の作品にもかかわらず、劇場未公開だったらしい。
道理で知らなかったはずだ。
物語はこのように始まる。
城勤めの武士・平松正四郎は、平松家を再興する当主に選ばれ、城代家老の娘との縁組も決まり、忙しい日々を送っていた。そんなある日、記憶喪失の娘が突然平松家に迷い込んでくる。
中井貴一と浅野ゆう子の演技も良いが、なによりもフランキー堺が良い味を出している。
特筆すべきはその映像。
わが国初の本格的長編ハイビジョンドラマとして作られたものらしいのだが、
市川監督の映像に対するこだわりが十分に感じられる。
日本映画の時代物にふさわしく、陰翳の妙がすばらしい。
文豪・谷崎潤一郎が礼讃した「嘗て日本の生活の中にあった陰翳」を存分に堪能させてもらった気分です。
良い映画を観ました。
山本周五郎氏の原作を読みたくなり、古本屋で買い求めました。
新潮文庫の「おさん」に収められた短編です。
先ほど読み終えたのですが、深い余情のある秀作でした。