佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

容疑者xの献身

7月21日

容疑者xの献身

それは数学界において最も有名な問題のひとつだった。『平面または球面上のどんな地図も四色で塗り分けられるかどうか』というもので、一八七九年にA・ケーリーによって提出された。塗り分けられることを証明するか、それが不可能な地図を考案すればいいわけだが、解決されるまでに百年近くを要した。証明したのはイリノイ大学のケネス・アッペルとウォルフガング・ハーケンで、ふたりはコンピュータを用い、あらゆる地図が約百五十の基本的な地図のバリエーションでしかないことを確かめ、それらすべてについて四色で塗り分けられることを証明したのだ。一九七六年のことだった。
「俺はあれが完全な証明だとは思っていない」石上はいった。
「そうなんだろうな。だからこそ、そうやって紙と鉛筆で解こうとしているわけだ」
「あのやり方は人間が手作業で調べるには膨大すぎる。だからこぞコンピュータを使ったんだろうが、おかげでその証明が正しいのかどうかを完璧に判断する手段がない。確認にもコンピュータを使わなければならないなんてのは、本当の数学じゃない」
「やっぱりエルデシュ信者だ」長髪の男はにっこり笑った。

                                                                                (本書107Pより)

 

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『容疑者の献身』(東野圭吾/著・文春文庫)を読みました。

裏表紙の紹介文を引きます。

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。

探偵ガリレオ」こと物理学者湯川学シリーズの長編作。直木賞をとっちゃってます。泣けます。東野さんて『手紙』でも『白夜行』でも『さまよう刃』でも、主人公の想いが深く熱い。それも真面目に熱い。好きです、そんな人。

 

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