佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『子育て侍』『竜笛嫋々』『春雷道中』 -酔いどれ小籐次留書-

忠義を尽くす主(あるじ)はただ一人。

思いを寄せる女性(ひと)もただ一人。

 

 

 佐伯泰英・著(幻冬舎文庫)、酔いどれ小籐次留書シリーズ第七弾『子育て侍』、第八弾『竜笛嫋々』、第九弾『春雷道中』を読みました。このシリーズ、読み始めるとやめられません、止まりません。三冊連続で読み、次を読みたい気持ちをかろうじて抑え、別の本に移りました。別の本とは宇江佐真理さんの『雷桜』です。『雷桜』の魅力をもってやっと続編を読みたい気持ちを押さえ込んだということです。佐伯泰英いっぽんやりでも良いのですが、本は頭の栄養、偏食はいけません。それに、大好きなシリーズは少しずつ読んでいって、楽しみを先に残しておくのも良いと思うのです。一気呵成に読み終えると達成感はあるのですが、もうそれ以上読むことが出来ないという喪失感もあります。けっこう複雑です。

 さて、本の内容です。裏表紙の紹介文を引きます。


『子育て侍』

赤目小籐次は、水戸藩の騒動を治めた矢先、子連れの刺客・須藤平八郎を討ち果たす。以来、須藤の子・駿太郎を養育し始めるが、身辺には不穏な侍の影がつきまとうのだった。四家追腹組の新たな刺客なのか?警戒を強める小籐次だったが、駿太郎の出生に驚くべき秘密が隠されていることなど知る由もなかった…。人気シリーズ、緊迫の第七弾。


『竜笛嫋々』

赤目小籐次が思いを寄せるおりょうに縁談話が舞い込んだ。だが、この話に違和感を抱くおりょうは、小籐次に縁談相手の高家肝煎・畠山頼近の素性調査を依頼する。そんなある日、おりょうが謎の手紙を残して失踪。折りしも小籐次の探索で畠山が偽者との疑いが浮上する。はたして縁談に隠された思惑とは何なのか?大人気シリーズ、手に汗握る第八弾。


『春雷道中』

ほの明かり久慈行灯の製作指南と、久慈屋の跡取り娘と手代の結婚報告のため、水戸へ出立した小籘次ら一行。だが、主人の座を狙っていた番頭の泉蔵が率いる一味に、突如として襲撃される。折も折、一行の行く手を阻む新たな騒動が勃発。図らずも二組の敵を迎え撃つこととなった小籘次に、はたして活路はあるのか。風雲急を告げるシリーズ第九弾。


 このシリーズ、意外な展開を見せてきました。赤目小籐次に子どもが出来たのです。といっても実子ではありません。前作最後で子連れの刺客須藤平八郎との果たし合いに勝った小籐次。果たし合いの前に須藤平八郎とは小籐次が勝った場合、父親がいなくなる赤子の駿太郎は小籐次が育てるとの約定があったのだ。自分の命を狙った相手の子どもとはいえ武士の約定。小籐次は男手一人で駿太郎を育てる決意をした。なんと「酔いどれ小籐次」が「子連れ小籐次」になってしまったのだ。とはいえ、酔いどれは相変わらずですが……

 もう一つ、第八弾『竜笛嫋々』で小籐次がただ一人思いを寄せる女性おりょうに縁談が持ち上がる。また、駿太郎がらみでおりょうとの新たな展開が開けてきそうな気配も漂ってきました。そして第九弾では小籐次留守中におりょうが小籐次の住む長屋まで来て置き文をして帰った。いよいよ小籐次の忍ぶ恋が実を結ぶのかと思いきや、小籐次とおりょうの仲にはその後なんの展開も見せぬまま第九弾『春雷道中』も了。やはり小籐次の恋は忍ぶ恋に終わってしまうのか。今後の展開が気になるところ、第十弾のおたのしみということで。