2011/6/8
嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
『やった! またひとり殺せた』
とちゃんと思うてくれとる?」
(本書P33より)
『夕凪の街 桜の国』(こうの史代/著・株式会社双葉社)を読みました。久しぶりの劇画です。
原爆という重いテーマを扱いながら、原爆の加害者に対する非難の視線ではなく、むしろ原爆の記憶と向き合う形で描いている。また、被爆者に対する差別意識を浮き彫りにしつつも、それを断罪しようともしない。他を非難することはたやすい。そうすることで自分は正義の側に立てる。しかし、こうのさんはそうしなかった。そうであるからこそ、こうのさんのやさしい視線がかなしい。